[III-SY10-04] フォンタン術後肝硬変合併症例の実像とリスク因子の検討
Keywords:フォンタン, 肝硬変, 回避率
【背景】肝硬変(liver cirrhosis、以下LC)はフォンタン術後遠隔期の成績を左右する合併症と認識されているが、データの蓄積がまだ十分ではない。【目的】フォンタン術後のLC合併症例像について明らかにし、現在のフォンタンストラテジーについて見直すこと。【対象】対象は現在のストラテジーに基づいて行った2000年1月以降の初回TCPCだけではLCの発症例が少なく、当院における全初回フォンタン手術症例434例。男234女200。診断はAsplenia 90、HLHS67、SV93、PAIVS37、TA46ほか。主心室は右室236・左室198。手術時年齢は平均4.0歳、中央値2.3歳、平均体重は12.4kg。術式はextracardiac TCPC328、intracardiac TCPC40、LT22、APC13ほか。LCは消化器内科(専門外来)の診断に基づいた。【結果】観察期間は平均11.3年(最長37.2年)。死亡は36(8.3%)で死亡回避率は10年93.6%、20年87.9%、30年86.4%(Kaplan-Meier)。LC発症は21例(4.8%)で回避率は10年99.7%、20年92.0%、30年52.0% (同)。なお、2,000年以降の症例に限ると382例中6例(1.6%)。LCと死亡に因果関係なし(p=0.3481)。LC発症をoutcomeとして多変量解析を行うと、術後経過年数(p=0.0002)、術前酸素飽和度(p=0.0202)が有意な因子であり、経過年数を当然のものとして除外すると術前酸素飽和度(p=0.0406)のみが有意な因子であった。ただし、2000年以降の症例ではLCと術前酸素飽和度は関連なし(p=0.7951)。2000年を境にして前後に分けるとLC回避率に改善が見られていた(p=0.0084[Log-rank]、20年回避率81.9%[前期]、92.2%[後期])。【結語】LCはフォンタン術後遠隔期の重要な合併症の一つであり、30年で半数程度の発症がみられた。近年のストラテジー・術式の改良により発症の改善はみられるが、まだまだ長期にわたる慎重な観察・データの積み重ねが重要であろう。