[III-SY10-05] 幼児早期のフォンタン完遂は本当に至適か? ー成人期フォンタン患者病態からの考察ー
Keywords:フォンタン, 手術年齢, 多臓器障害
背景:幼児早期フォンタン(F)手術完遂の治療戦略は早期心室容量軽減による遠隔期の心機能と運動耐容能維持にある。しかし、F術後遠隔期はF関連肝臓病などF循環罹患期間に関連する多様な合併症が発症するため、早期F循環完遂戦略の功罪は成人期でのF病態から評価することが重要である。目的:F術年齢と成人期F病態との関連を多臓器障害の観点から評価し、早期F手術完遂の功罪を検証する。方法と結果:対象は成人単心室循環患者149例をF術が4歳未満(E群:35例)、4歳から15歳(M群:74例)、16歳以上(L群:15例)で施行された3群(各々の手術年齢は平均3±1、8±3、24±8歳)とF術未施行群(U群:25例)の4群とした。この4群間の成人期の病態(主要合併症[蛋白漏出性胃腸症、肺動静脈瘻、ペースメーカ植込]、内服頻度、心血行動態、呼吸機能、肝腎機能、耐糖能)と予後を比較した。L群では4群中合併症率、内服率が最も高く(p<0.05)、心血行動態ではF循環群では中心静脈圧が高く、心室容積が大きく(p<0.05)、肝機能では4群中L群の肝臓繊維化指標が最も高く(p<0.05)、腎機能ではF循環3群中L群の腎機能が最も低く、微量アルブミン尿が多く(p<0.05)、耐糖能異常では4群中L群の糖尿病の頻度が高かった(27%)。一方、これら多臓器障害はE群とM群に差はなかった。運動耐容能はU群が最も低く、F循環群ではL群が最も低かったが、E群とM群に差はなかった。成人期以降のL群、U群の死亡率に差はなくE群に比べ各々4倍、6倍高かったが(p < 0.05 – 0.01)、E群とM群に差はなかった。 結論:高齢F完遂は心血行動態と予後がF未施行と差がなく慎重であるべきである。一方、4歳未満の幼少早期F完遂の多臓器機能からみた利益は少なく、精神神経発達も考慮したF完遂の至適時期は幼少期以降の小児期に存在する可能性がある。