[III-SY12-04] メタボローム解析を用いたミトコンドリア活性化ヒト心筋前駆細胞移植法の効果検証
キーワード:細胞移植療法, ミトコンドリア, メタボローム解析
【背景】代謝物の網羅的解析であるメタボローム解析は、疾患の表現型に近い変化のスクリーニングに適しており、種を超えて分析法を共有できるという利点もある。メタボローム解析を用いて、我々が研究を進めているミトコンドリア(Mt) 機能を強化した移植用心筋前駆細胞(MITO Cell)の治療効果を検証できる可能性があると考えた。MITO CellはMt 標的ドラックデリバリーシステムであるMITO-Porterを用いて、移植用細胞のMtに薬剤を選択的に送達し調製する。これまでにマウス細胞由来MITO cellを用いてドキソルビシン心筋症および虚血再灌流モデルマウスに対する心不全発症の予防および治療効果を報告した。【目的】MITO Cellの臨床応用を目指し、現在はヒト細胞由来MITO cellの研究開発を進めている。ヒト細胞由来MITO cellを虚血再灌流モデルラットに投与し、メタボローム解析を用いて治療効果を検証した。【方法】ヒト心筋前駆細胞(human cardiosphere-derived cell : hCDC)の培養液にcoenzyme Q10(CoQ)を封入したMITO-Porterを添加して、Seahorse XF Analyzerで測定した酸素消費速度をもとに細胞のMt機能を評価した。また、心筋虚血再灌流モデルラットを作成し、hCDC(未処理細胞)移植群とMITO cell移植群での効果を比較した。【結果】MITO cellはhCDCと比較して有意に酸素消費速度が上昇し、CoQ封入MITO-PorterによりhCDCのMt機能が亢進した。心筋虚血再灌流モデルラットへの効果検証では、MITO cell 移植群で心機能の改善および心筋線維化の抑制を認めた。メタボローム解析ではMITO cell 移植群の心筋でアミノ酸やグルタチオン生合成経路やTCA回路などエネルギー関連の代謝産物濃度が高く、ATP量も高かった。【結論】Mtへの薬剤送達がヒト由来細胞移植療法の成績向上に寄与する可能性が示唆された。メタボローム解析を用いた治療効果検証は細胞移植療法の作用機序の解明につながる可能性もある。