[III-SY12-05] 左右短絡肺高血圧マウスはERGの低下により内皮間葉転換を来たし肺動脈をリモデリングさせる
キーワード:肺高血圧, 左右短絡マウス, 内皮間葉転換
【背景】左右短絡を伴う先天性心疾患による高肺血流が、肺細動脈をリモデリングさせる原因は不明である。近年、心室中隔欠損の肺細動脈において病的高シェアストレス(100dyn/cm2以上)を生じていることが報告された。そこで細胞実験において病的高シェアストレスを肺動脈内皮細胞に与えると、正常シェアストレス15dyn/cm2に比べ転写因子ERGが低下し、内皮間葉転換をきたすことを見出した。【仮説】高肺血流は生体内で肺細動脈内皮細胞のERGを低下させ内皮間葉転換をきたし血管が閉塞する。【方法】左右短絡マウスは、下行大動脈と下大静脈の隣接部を25ゲージ針で穿刺して作成した。対照群は開腹・閉腹術のみ行った。肺血管内皮細胞特異的なERG過剰発現は、既報のアデノ関連ウイルス(AAV2-ESGHGYF)を用いて行い、左右短絡作成術の1週間前に静注して予防投与した。対照としてluciferaseを過剰発現させた。術後8週で血行動態と組織学的評価を行い4群(N=10)を比較検討した。【結果】術後8週で左右短絡の自然閉鎖を除外するために腹部エコーを行い、下大静脈内において左右短絡により生じる乱流が示すモザイクカラーを確認した。またアデノ関連ウイルスの肺特異的なトランスフェクションはluciferaseによる発光を光学画像を用いて確認した。左右短絡術+luciferaseマウスは右室収縮期圧37.2±1.0 mmHgであり、開腹・閉腹術+luciferaseの21.9 ±0.6 mmHgに比べ有意に高値であった。左右短絡術+ERGマウスは29.2±0.8 mmHgと有意に改善したが正常化はしなかった。右室重量や肺細動脈の筋性化も同様の結果だった。左右短絡術術+luciferaseマウスは肺組織でERGタンパク発現が有意に低下し、内皮間葉転換をきたしており、それらは左右短絡術+ERGマウスで改善していた。【結論】肺血管内皮細胞のERGをレスキューさせる治療薬は、肺動脈性肺高血圧の新たな治療薬の候補となる可能性を秘めている。