[III-SY13-04] 治療拒否家族への対応としての緊急院内倫理委員会開催の意義
Keywords:胎児心奇形, 胎児診断, 倫理委員会
複雑先天性心疾患を診断された家族の動揺は大きく、出生後の治療を拒否することもあり得る。ケース毎に疾患重症度、家庭環境などが異なり、また出産という時間制限がある中で後からの検証にも耐えうる結論を出す必要がある。従来、治療拒否を示した家族への対応は小児循環器医が行い、ご家族と可能な限りの話し合いをした上でも治療拒否が強い場合児童相談所などとの連携をしていたが、近年は必要があれば緊急病院倫理委員会を開催し、疾患重症度、治療成績、予後も勘案して病院としての結論を出すことにしている。これにより法的な判断が難しい場合でも顧問弁護士、行政などと相談し病院としての意見を出すことにより担当医の心理的負担軽減に役立っている。一部紹介する。症例:在胎28週、左心低形成症候群。在胎27週胎児心構築異常のため紹介受診。胎児心エコーではHLHS (MA/AA)、肺静脈血流パターンより肺うっ血なし、上行大動脈径2mm、TR trace、他の合併奇形を疑う所見なく、HLHSとしてはスタンダードリスクと伝えた。在胎36週時にご両親より手術治療拒否の意志を伝えられた。そのため1)ご自身の治療拒否と親が子供の治療拒否を行うのは全く異なること2)児童相談所など行政と相談すること3)病院倫理委員会を開催して審議を行う必要があることを説明した。病院倫理委員会では重篤な合併奇形がない場合は80%以上の生存率(123例中99例生存)とする当院治療成績なども含めて審議され、両親の選択は「子どもの最善の利益」に反し、手術の提案が妥当という結論を得た。親権と治療の代諾に関しては児童相談所と相談し、親権停止も視野に協議を続けた。出生直前に両親とも治療に前向きとなり、出生後治療同意を得て手術を行ない、現在フォンタン手術終了し経過観察中。担当医師の心理的負担を軽減し、後からの検証にも耐え得る病院としての結論を出すためにも院内倫理委員会は有用である。