[III-SY13-05] 胎児診断後、積極的治療を希望されなかった左心低形成症候群2症例
キーワード:胎児診断, 治療拒否, 左心低形成症候群
【はじめに】胎児診断が進歩する中、胎児先天性心疾患に対して積極的な治療を望まない症例を経験するようになった。今回、異なる選択をした家族について、その経過と対応を紹介する。【症例1】36歳、2経産婦。31週に心疾患疑いで循環器科初診、左心低形成症候群類縁疾患と診断した。34週に積極的治療を望まない旨申し入れあり、複数回の説明を繰り返すも意思は変わらず、38週に院内倫理委員会を施行。両親と話し合い、出生後必要に応じて内科的治療は同意されるも、外科的治療は希望されず。41週1日、2776gで出生後、日齢3に再度院内倫理委員会を施行した。出生後の愛着形成もあり、日齢3に外科的治療も希望された。日齢6に心房中隔裂開術、日齢7に両側肺動脈絞扼術、日齢32に動脈管ステント留置し、生後3ヶ月で退院し、現在も治療継続中。【症例2】31歳、初産婦。MD双胎で、19週に左心低形成症候群と診断。他児が正常児であり妊娠継続希望され、心疾患児の積極的治療は望まなかった。複数回の説明を繰り返すも意思は変わらず、34週に院内倫理委員会を施行。循環器病棟、母性棟、新生児科を交えて議論し、出生後の対応に関して家族と話し合った。37週5日、2266gで出生し、治療介入は行わず、母児同室、夜間は循環器病棟で父との同室を行い、日齢5に家族と共に退院となった。【考察】家族が治療方針決定に至るまでの葛藤や受容についてはそれぞれの段階を踏まえた心理的変化がある。「重篤疾患を持つ子供の話し合いのガイドライン」が存在するが、家族の結論を受け止めるには個々の症例に応じた対応が必要となる。。我々は科内だけでなく、倫理委員会開催、看護師、助産師、心理士、新生児科医、産科医との情報共有と両親との複数回の話し合いを行い、児の最善を模索した。重症心疾患では、医療ネグレクトとの線引きも難しく、多職種の連携、家族の思いの聴取と話し合いの重要性を痛感した。