[III-TISL-1] “単心室”の達人になろう!
キーワード:univentricular heart, cardiac morphology, single ventricle
【背景】いわゆる“単心室”には、心臓構造異常の主要素が網羅されている。【目的】形態的解析から、この疾患群における着眼点を示し、その臨床的意義を考える。【方法】両側心房一側心室挿入(double inlet)を中心に、形態スペクトラムを提示する。[三尖弁閉鎖については2022年の本会標本展示講演で既述]【結果】1)主心室型は左室(LV)、右室(RV)。前者では痕跡的(rudimentary)RVが前上方に、後者では痕跡的LVが後下方に存在することが多い。ごく稀に、真の単心室(原始的未分化心室)に遭遇する。2)double inletでは、両側の房室弁が主心室へ開口する。房室弁形態は、左右二弁の場合と共通弁の場合がある。共通房室弁は、heterotaxyに多い。どちらかの房室弁がstraddlingあるいはoverridingしている場合には、低形成心室がそれなりの容量となり、二心室均衡への移行スペクトラムとなる。3)痕跡的心腔と主心室・両側心房との相対的な位置関係により、心室ループ(D-あるいはL-)が推測できる。こうした配置パターンは、刺激伝導系や冠動脈の走行と関連していることが多い。4)肺動脈(PA)・大動脈(Ao)の位置関係は、360度の連続スペクトラムである。これにPA・Ao間のoutlet septum偏位の要素が加わり、肺動脈狭窄や肺動脈閉鎖から、大動脈弁狭窄・大動脈縮窄など、多彩なバリエーションを呈する。5)前方の痕跡的RVが流出経路となる場合には、心室間交通の径が臨床上の留意点となる。【考察】“単心室”系疾患群では、心室の流入部、流出部、中隔という3要素全てに異常を呈する。それぞれの構造異常を能動的に認識することで、形態診断の臨床的意義を把握しやすくなる。特に、形態スペクトラムの理解は有用である。【結論】上記を修得して、あなたも“単心室”の達人。