第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

染色体異常・遺伝子異常

一般口演1(I-OR01)
染色体異常・遺伝子異常

2024年7月11日(木) 08:00 〜 09:00 第6会場 (4F 401-403)

座長:柴田 映道(慶應義塾大学医学部小児科学/日本赤十字社栃木県支部足利赤十字病院小児科)
座長:上砂 光裕(日本医科大学/日本医科大学多摩永山病院小児科)

[I-OR01-01] 想定外の遺伝学的検査結果が得られた上行大動脈病変を有する遺伝性結合織疾患の検討

山本 英範1,2, 田辺 紋子3, 森田 真未4, 森川 真紀4, 畠山 未来4, 森本 美仁1, 郷 清貴1, 深澤 佳絵1, 大橋 直樹1, 加藤 太一1 (1.名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター 小児科, 2.トヨタ記念病院 小児科, 3.トヨタ記念病院 ゲノム医療科, 4.名古屋大学医学部附属病院 ゲノム医療センター)

キーワード:結合織疾患, Marfan症候群, Loeys-Dietz症候群

【緒言】Marfan症候群(MFS)をはじめとした遺伝性結合織疾患の表現型は多彩であり、臨床所見のみでは診断が困難な症例も散見される。診断(原因遺伝子)により大動脈解離のリスクが異なるため、臨床診断と遺伝学的検査結果のズレを確認することは重要でありこのたび調査した。
【方法】上行大動脈病変を有し、MFS、Loeys-Dietz症候群(LDS)、家族性胸部大動脈瘤・解離(FTAAD)が臨床的に疑われた症例に対してかずさDNA研究所で遺伝学的検査を行い、想定外の結果が得られた症例を後方視的に検討した。遺伝学的検査済の血縁者を有する症例は除外した。
【結果】対象は血縁関係のない12例(成人例含む)。9例が家族歴を有した。水晶体偏位、頭蓋顔面所見、骨格所見を元にした臨床診断は、MFS:4例、LDS:4例、MFSまたはLDS(判別困難):3例、FTAAD:1例。9例は想定された遺伝子(MFS→FBN1、LDS→TGFBR1/TRFBR2/SMAD3、FTAAD→ACTA2/MYH11/MYLKをそれぞれ想定)のバリアントが確認されたが、3例で想定外の結果を得た。≪症例1≫20代男性。15歳で予防的David手術。水晶体偏位あり。家族歴あり。臨床診断はMFSだがいずれの遺伝子にも病的バリアントなし(コピー数異常、スプライス異常も含む)。≪症例2≫50代男性。25歳で大動脈解離。水晶体偏位なし。眼間離開あり。家族歴あり。臨床診断はLDSだがFBN1に病的バリアント検出。≪症例3≫30代男性。27歳で大動脈解離。大動脈以外の身体的異常所見なし。家族歴あり。臨床診断はFTAADだがTGFBR2に病的バリアント検出。
【考察】臨床所見のみでは正確な診断が困難な症例が存在し、それはすなわち手術介入のタイミングを誤るリスクとなる。特にLDSは大動脈解離リスクが非常に高く、これらの症例においては早期診断のために積極的な遺伝学的検査が求められる。一方で臨床的な診断基準を満たしながらも原因遺伝子が判明しない症例への手術介入時期ついては慎重な検討を要する。