[I-OR01-03] 突然死の家族歴から診断に至った無症状の血管型エーラスダンロス症候群
キーワード:血管型エーラスダンロス症候群, COL3A1変異, 家族スクリーニング
【背景】血管型エーラスダンロス症候群(vEDS)はCOL3A1変異に基づき動脈や腸管などの脆弱性を呈する常染色体顕性遺伝性疾患であり、頻度は50,000~200,000人に1人で全エーラスダンロス症候群患者の約5%と推定される希少疾患である。本症候群は組織脆弱性に起因した心血管合併症を発症してから診断されることが多い。今回、突然死の家族歴からvEDSの診断に至った無症状の小児例を報告する。【症例】症例は初診時5歳の女児。父が35歳で脳動脈瘤破裂、胸腹部大動脈瘤破裂のため突然死し、背景に遺伝性疾患がある可能性を考慮されて当院小児科を紹介受診した。Marfan症候群やLoeys-Dietz症候群など遺伝性結合織疾患を示唆する明らかな身体所見や、心臓超音波検査で大動脈基部拡大を含めた異常所見を認めず経過観察を行っていた。その後も明らかな症状や異常所見は認めなかったが、11歳で施行した遺伝子検査にてCOL3A1遺伝子のミスセンス変異が検出され、vEDSと診断した。頭部単純MRI検査と胸腹部造影MRI検査では動脈瘤や動脈解離は認めず、心血管系合併症の予防目的にセリプロロール内服と運動制限を開始した。今後, 胸痛や腹痛を認めた場合には気胸や胸腹部動脈病変を鑑別することとしている。【考察】18歳未満で診断されるvEDSの60%は家族歴を契機に診断に至るが、疾患の希少性に加え若年では臨床所見に乏しいことから弧発例での診断は困難であるとされている。本症例は突然死の家族歴からvEDSの診断に至ったことで、心血管系合併症の発症前にβ遮断薬内服や運動制限を開始し、救急受診時の診療体制を構築することができた。若年での動脈瘤や解離、消化管破裂、妊娠中の子宮破裂などの家族歴がある場合には本症候群を念頭に置き遺伝子検査を考慮すべきである。