[I-OR03-03] 胎児重症三尖弁閉鎖不全症例の胎児治療適応の層別化の可能性
キーワード:三尖弁閉鎖不全, 胎児治療, Ebstein病
【はじめに】エプスタイン病を代表とする三尖弁閉鎖不全疾患(TVD)の重症度は様々で、胎児期に Circular shunt(CS)を呈する最重症例は胎児死亡に至る症例が存在する。近年、母体に対するNSAIDsの投与により胎児動脈管を収縮させ、胎児循環を改善する治療が報告されているが、その適応については議論の余地がある。【目的】TVDの重症度、臨床経過を明らかにし、胎児治療適応症例の抽出について検討する。【対象・方法】2013年から2023年に発生したTVD20例を対象とし、SASスコアとTRIPPスコア点数と臨床経過の結果を提示する。SASスコアは5項目を各0-2点(合計10点)で、TRIPPスコアは4項目を各0-2点(合計8点)でスコア化した指標である。【結果】母体年齢31.9歳、検査時在胎週数31.3週、分娩週数36.3週であった。胎児超音波所見によるSASスコアは4.7±3.1点で、TRIPPスコアは3.4±2.7点であった。生存可能であった症例はSASスコア3.7±2.8点/TRIPPスコア2.8±2.5点、IUFD症例は7.3±2.8点/5.5±2.4点に分布していた。SASスコア/ TRIPPスコアのカットオフ値6点とすると感度75%、特異度69%/感度75%、特異度81%で死亡例を予測できた。スコア高値で生存した1症例はCS症例ではなく肺動脈閉鎖例で胎児治療適応外であった。スコア低値で死亡した1症例はlarge VSDを合併しており、母体適応(ミラー症候群)で29週3日に誘発分娩となり、出生後死亡を確認した。本症例を除いた検討では、SASスコア/TRIPPスコアのカットオフ値を6点とすると、感度100%、特異度69%/感度100%、特異度81%となった。【結語】SASスコア、TRIPPスコアによる重症度の層別化は有用で、6点以上はIUFDのリスクを考慮し、胎児治療適応であることが示唆される。