[I-OR03-05] 双胎胎児における心室拡張期充満時間の検討
キーワード:胎児心機能, 双胎, 心室拡張期充満時間
重症な合併症を伴わない双胎管理は一般病院で管理されることが多く、特別な機器や技術が必要な心機能評価を行うことは難しい。RR間隔で補正した心室拡張期充満時間(DFTc)は、検査機器を選ばず手技も簡単であるため、双胎心機能評価の一助となる可能性がある。【目的】DFTcが双胎胎児心機能の指標として有用かどうかを検討する【方法】2015~2023年に当院で妊娠管理を行った117組の双胎において、胎児心エコー検査記録よりDFTc、診療録から児の検査時の体重、羊水量、臨床像を抽出し、DFTcと二児の体重差、臨床像との関係を検討した。【成績】二絨毛膜二羊膜双胎(DD)58組、一絨毛膜二羊膜双胎(MD)59組にのべ562胎児の心エコー検査が行われていた。検査時週数は27.6±4.2週。左室のDFTcは週数と緩やかな相関を有し(p=0.004)、全体で0.41±0.04、DDとMDで差はなく、またDD, MDともに体重の小さい児(S児)と大きい児(L児)に差はなかった。右室のDFTcは週数に関係なく0.39±0.04、DDとMDで差はなかったが、MDでL児がS児と比較し優位に小さかった(S児 0.390 VS L児 0.382, p=0.022)。両児の体重差を%で示したdiscordant rateとDFTcの関係は、DDの右室で弱い負の相関があり(p=0.0249)、体重差が大きくなるとS児でDFTcが低下した。MDでは両室とも一定の傾向はみられなかったが、右室DFTcが0.3未満である児はMDのL児5例でのみ見られ、うち1例は双胎間輸血症候群(TTTS)の基準を満たさず羊水差があるTAFDの状態、2例は右室のDFTcが0.3を切ったのちにTTTSを発症した。1例はTTTSの診断基準を満たさないままL児が重度の心不全をきたし、緊急帝王切開となった。【結論】DD S児における右室DFTcの低下は胎盤機能に由来する可能性がある。MD L児では右室DFTc低下が児の状態の悪化を予測する指標となりうる。