[I-OR05-01] 自己肺動脈弁温存右室流出路再建術の適応と課題:中期遠隔成績からみえること
キーワード:自己弁温存右室流出路再建, ファロー四徴症, 肺動脈弁閉鎖不全
【背景】ファロー四徴症術後の肺動脈弁逆流は長期にわたる右室容量負荷となり遠隔期右心不全、不整脈につながる重大な因子である。当院では適応のある症例は自己肺動脈弁尖を温存しつつ肺動脈弁輪を拡大するvalve-sparing術式を適応としてきた。その手術成績と課題を後方視的に検討した。【方法】対象は2010年以降に自己弁温存の右室流出路再建(RVOTR)を行った連続10例。術式は1.肺動脈弁交連を切開。2.主肺動脈から前方の肺動脈弁尖の弁腹を切開、下方は弁輪を越え約1.5cm右室切開。3.楔状に切開された前方の肺動脈弁尖に自己心膜をあて弁尖拡大し、頭側に翻転し主肺動脈切開線を補填。4.右室切開部をePTFE patchで補填し自己心膜パッチとの縫合線を新たな弁輪として形成する。(ビデオ供覧)【結果】手術時月齢平均11.0±2.5ヶ月、体重平均 8.4±0.8 kg。体肺動脈短絡先行4例。弁尖形態は2尖12例、3尖1例であった。術後平均60ヶ月 (最大13年)の観察期間内に死亡例はなかった。2例に遠隔期右室流出路筋肥厚による狭窄を認め右室流出路パッチ形成を要した。術前肺動脈弁輪径は7.8 (6.9~9.8) mm, Z-score; -3.7(-4.8~-1.7)、術後最遠隔期のRVOT平均圧較差は23 (17.3~32)mmHg, PRはGrade1:4例、Grade2:6例。再遠隔期の肺動脈弁輪径は経時的に拡大し(平均Z score -0.45±1.2)、RVEDViは維持されたまま成長していた(平均RVEDVi 85.6±9.4 ml/m2)。【結論】当院の自己弁温存RVOTRの中期成績ではある程度の弁逆流が残るもののRVEDVを保ったまま肺動脈弁輪の成長が認められた。しかし右室流出路狭窄に介入を要した症例や遠隔期のPRなど課題も認められ、さらなる術式の改善と研鑽が求められる。