[I-OR06-02] 重症Ebstein病に対する新生児期手術介入の要否に関わる予測指標の探索
キーワード:Ebstein病, 新生児期手術, S/D比
【背景】重症Ebstein病は、単心室循環、両心室循環どちらを目指すかに関わらず、生後まもない新生児期に手術介入を要する症例が多いが、中には内科的管理で乳児期以降まで初回手術を待機できる症例もあり、その臨床像は様々である。これまでに三尖弁逆流(TR)の血流速度など単心室循環、両心室循環を予測する指標は報告されているが、新生児期の手術介入の要否を予測する指標は十分に検討されていない。【目的】新生児期の手術を要した群と要さなかった群の臨床的特徴を解析し、新生児期手術の要否に関する予測指標の抽出を目指す【方法】2018年-2023年に当院で出生した重症Ebstein病(出生前エコーで右房面積指数(RA index)>1.5)9例の妊娠・分娩経過、児の出生後の臨床経過、出生前後の各種検査指標を、新生児期手術を要した群と要さなかった群の間で比較・検証した。【結果】新生児期に手術を要した群(S群)は5例、要さなかった群(F群)は4例であった。出生前のRA index、心胸郭断面積比、出生時の在胎週数、出生体重、APGARスコア、出生後の心胸郭比、TR最大流速、TR dp/dt、体表面積あたりのplasteringや三尖弁、肺動脈弁径は二群間で有意差を認めなかったが、出生時エコーのTRから求めた右室機能指標である収縮期時間/拡張期時間(S/D)比が、S群 2.18±0.27 vs F群1.72±0.20(p<0.05)と有意差を持ってS群で延長していた。ROC曲線ではAUC 0.95で、Youden法を用いてS/D比の閾値を求めると1.99となり、感度100%、特異度80%で新生児期手術の要否を予測した。【考察】S/D比はこれまでに心筋症やFontan術後患者で心機能や予後予測指標としての有用性が報告されている。本研究では、症例数が少ないものの、重症Ebstein病患者の右室機能および予後予測指標としてS/D比が有用である可能性が示された。【結論】重症Ebstein病患者において、出生時エコーのTR波形から求めたS/D比>2は新生児期手術介入の予測指標となりうる。