[I-OR06-03] 小児心疾患における前負荷動員一回仕事量と心血管カップリングの単一心拍推定法
キーワード:心収縮能, カップリング, 単一心拍推定法
【背景】前負荷動員一回仕事量 (PRSW)は、収縮末期エラスタンスよりさらに負荷依存性が低く、再現性も高い心収縮能の指標だが、負荷を変えながらの複数心拍での計測が必要なことにより臨床応用が限られている。我々はPRSWとその血管とのカップリングを単一心拍から推定する新たな方法を考案し、イヌの左室、成人の左室・右室において報告してきた。しかし、この方法が多様な心室形態を有する小児心疾患患者に適用可能かどうかは不明である。【方法】2012年から2014年に心臓カテーテル検査を行った29名(女性13名)の小児患者において体心室の圧断面積同時計測を行った。下大静脈閉塞中のPRSW関係の傾き(Msw)とX軸との交点(Asw)を実測した。単一心拍Mswは、収縮末期断面積がAswの時の収縮末期圧として求め、後負荷とのカップリングはMswを平均駆出圧(Pm)で除して求めた。【結果】患者は6.5±4.2歳、基礎疾患は先天性心疾患23名(未修復2名、二心室修復術後4名、グレン術後4名、フォンタン術後13名)、肺動脈性肺高血圧症1名、川崎病後5名であった。下大静脈閉塞で求めたMswは中央値59(IQR: 55-70)mmHg、ドブタミン投与後中央値81(IQR: 72-85)mmHgと増加した(n=12, p=0.001)。新たに考案した単一心拍法で求めたMswは実測のMswと強く相関し(r=0.91, p<0.0001)、ドブタミン投与前後の変化を有意に検出できた(n=12, p=0.001)。心室血管カップリングの推定値も実測値と有意な相関を認めた(r=0.74, p<0.0001)。【結論】小児心疾患において初めて単一心拍から心収縮力及び心室血管カップリングを高精度に推定できた。このPRSW関係の解析は、低侵襲で心室特性と負荷との関係を評価できるため、小児心疾患における心室機能評価において多数例での評価に値する。