第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心臓血管機能

一般口演6(I-OR06)
心臓血管機能

2024年7月11日(木) 15:30 〜 16:30 第6会場 (4F 401-403)

座長:桑原 直樹(岐阜県総合医療センター小児循環器内科)
座長:豊野 学朋(秋田大学大学院医学系研究科小児科小児科学講座)

[I-OR06-06] 小児拘束型心筋症の予後リスク層別化における左房ストレインの有用性

石井 良, 末廣 友里, 西野 遥, 林 賢, 廣瀬 将樹, 石田 秀和, 成田 淳, 北畠 康司 (大阪大学 医学部 小児科)

キーワード:左房ストレイン, 小児拘束型心筋症, 予後リスク層別化

【背景】小児拘束型心筋症(RCM)は、臨床症状や発症時期、病状進行が多様であり、移植登録の決定に難渋する。成人心不全の心事故予測に左房ストレイン(LAS)が有効と報告されるが、小児RCMの報告は少ない。
【目的】LASがRCMの病態把握や、臨床リスク層別化に有効か検討する。
【対象と方法】2012年から23年に当院で診療したRCM 28例の初診時心エコーをTTA2.40 (Tom Tec社)にて解析した。初診時の収縮/拡張LAS(LASr/LASc)と同時期の2Dエコーや心カテとを比較し、移植待機予測の有用性や心房病理及び遺伝子変異の関連も検討した。
【結果】RCM 28例の年齢中央値は6歳(IQR; 4-7)、観察期間は23ヶ月(9-46)であった。移植登録は20例、うち移植到達は12例、VAD装着は5例、死亡は2例。遺伝子変異は14例で同定された。最大左房容積(LAVi)は75 (50-102) ml/m3。LASr、LAScは14.1 (9.4-23.1)、5.6 (4-8.8)であった。LASrは、LAVi及び左房駆出率と有意な相関を認めた(r=-0.7; r=0.8)。LASrとLAScはLVEDP、PCWP、CIとは相関しなかった。NYHA2度以下と比較し3度以上の群で、LASrとLAScは有意に低値であった(24.4 vs 9.7; 7.5 vs 4.4, p<0.001)。ROC解析は、移植登録予測に対するLASrのCut-off値は18(感度0.8, 特異度0.87; AUC 0.83)であった。Kaplan-Meier法でLASr<18の群(17例)は、移植登録及び移植実施が有意に早かった(p=0.0035)。また観察期間中LA機能の改善は乏しく、全例心移植登録もしくは死亡した。うち遺伝子変異は11例(65%)で同定され、TNNI3; 6、TNNT2;1、FLNC; 1、MYL2; 2、MYH7;1例であった。LASr≧18群の遺伝子変異は3例(27%)で認め、TNNI3; 1、FLNC; 2例であった。左房心筋の線維化は、LASr低値と強い相関を認めた(r=-0.9)。
【結語】RCMの病態把握には左房機能評価が重要であり、左房ストレイン解析は左房線維化と強く相関するとともに、小児RCMの予後予測や心臓移植待機登録時期の決定に有用であることが示唆された。