[I-OR10-01] 術後乳糜胸に対するリピオドール塞栓単独治療の効果: 補充療法からの脱却
キーワード:術後乳糜胸水, リピオドール, 胸管塞栓
【背景】術後乳糜胸は,損傷漏出(TL),肺内リンパ還流症候群(PLPS),中枢リンパ流障害(CLFD)の3つの病態に分類される.このうち,TLとPLPSについては胸管塞栓が有効とされるが,CLFDについては胸管塞栓があまり効果でないとされる.また,胸管塞栓についてはリピオドールに加え塞栓子や塞栓物質を使用した方が良いとされるが,施行可能な施設が限られていること,さらには乳糜胸による消耗状態のため侵襲性が強い治療が負担になる可能性があることがあり,なかなか施行できない.そのなかで,リピオドールのみの使用で補充療法からの脱却ができないかどうかを検討した.【症例1】1か月男児,左心低形成症候群に対するNorwood術後に乳糜胸となった.リンパ管シンチグラフィではPLPSであった.保存的治療で減少傾向がなく,補充療法が緩められないため,リピオドール造影を行ったところ,ドレーン排液は減少し補充療法も中止することができた.しかし,完全停止は得られず癒着療法を追加した.【症例2】1歳6か月男児,Fallot四徴/主要体肺側副血行路に対する修復術後に乳糜胸となった.リンパ管シンチグラフィではTLであった.保存的治療で減少傾向がなく,リピオドール造影を行ったところ,減少傾向に転じドレーン抜去に至った.【症例3】1か月女児,右側心房相同/単心房/単心室/肺動脈弁狭窄/重度共通房室弁逆流に対し共通房室弁形成/心室-肺動脈シャント術後に乳糜胸となった.シンチグラフィではTLであった.保存的治療で減少傾向がなく,補充療法が緩められないため,リピオドール造影を行ったところ,1週間で乳糜漏出は停止した.【結語】TLまたはPLPSに基づく術後乳糜胸症例では,リピオドールのみの使用で,乳糜漏出量が減少し補充療法から脱却できる可能性がある.