[I-OR10-06] Vocal cord paralysis after cardiovascular surgery in infants
Keywords:声帯麻痺, 反回神経麻痺, 頸部エコー
【背景】小児における術後声帯麻痺(VCP)の臨床経過に関しては十分に検討されていない.VCPの臨床像を明らかにするとともに,本合併症に対する当院の取り組みを報告する.【方法】対象は2009-2023年に施行した1歳未満の心臓手術1056症例. 確定診断は耳鼻科医による喉頭鏡検査で行った.2019年以降,集中治療科と連携し,新生児,arch repairなどハイリスク症例に対して全例で頸部エコースクリーニングを実施し,積極的に診断を行っている(106例).VCP発症例においては喘鳴が強く酸素化不安定な症例でNHFCを導入し呼吸管理を行い,ハイリスク群で発症した場合は胃管で栄養を再開し,嚥下機能評価で問題ないことを確認した後に経口摂取を再開している.これら症例の臨床経過を後方視的に検証した.【結果】VCPは64例(6.1%)で認めた.年齢,体重,arch repair等がVCP発症リスクであった.障害側は左51例,右8例,両側5例.症状は嗄声45例,嚥下障害33例,喘鳴27例.治療として胃管栄養43例,NHFC25例,管切開3例を要した.退院時点で胃管栄養は約半数,NHFCは全例離脱可能であった.遠隔期は7例(胃管6,気切1)を除いて治療離脱可能であった.症状が遠隔期まで残存していたものは6例で全例で耳鼻科followされておりVCPが残存.症状改善例58例のうち,45例が耳鼻科でfollowされておりそのうち19例はVCP自体が改善,残り26例は健側の代償機構により症状が改善している状態であった.VCP残存率は6,12,24カ月でそれぞれ73%,56%,52%.声帯麻痺が原因で誤嚥性肺炎,入院加療を要した症例は認めなかった.頸部エコーは喉頭鏡検査と比較し診断精度は感度88%(37/42),特異度90%(58/64)であった.【結語】VCP発症例は治療介入を要することが多いが遠隔期には大半で離脱が可能であった.症状は多くの症例で改善する一方で,約半数の症例は健側の代償による症状の改善であり,より長期の観察が必要である.頸部エコーは簡便で診断精度も高くスクリーニング検査として有用と思われた.