[I-OR11-06] 当院での重症Ebstein奇形の経験
キーワード:Ebstein奇形, Starnes手術, 三尖弁逆流
【背景】Ebstein奇形は多様な臨床像を呈し,治療方針を標準化するのが難しい疾患である.特に新生児期から心不全やチアノーゼを呈する重症Ebstein奇形は予後不良である.今回我々は,当院で経験した重症Ebstein奇形について検討した.【対象】出生直後に人工呼吸器管理を要したEbstein奇形を重症Ebstein奇形とし,2008年から2023年までに当院で経験した10例を後方視的に検討した.【結果】平均妊娠週数は37.3 ± 1.2週で,平均出生体重は2.9 ± 0.5 kg,胎児診断されていた症例が9例(90.0%)で1例は出生後に心雑音・チアノーゼから診断に至った.胎児期に胎児水腫を指摘された症例は3例(30.0%)であった.出生直後の胸部単純X線検査では全例でwall to wallの高度心拡大を認めた.順行性肺血流を認めたのは2例のみで肺動脈弁逆流は4例で認め,平均三尖弁圧較差は26.8 ± 5.8 mmHgであった.合併心奇形はVSDを1例,心筋緻密化障害を1例で認めた.新生児期を内科管理のみで乗り切れた症例は1例(10.0%)で,その他の9例は外科的介入を要し内訳は以下の通りであった.Starnes手術7例(うち2例はあらかじめ主肺動脈結紮を施行),PDA結紮2例.初回手術時の日齢は3 [1-7]日(中央値 [IQR])であった.生存退院できたのは7例(70.0%)で,残りの3例はECMO管理となり亡くなった.生存例のうち4例はFontan手術に到達し,1例はFontan手術待機中,残りの2例は二心室形態で外来フォロー中である.【考察】出生後に挿管管理を要した重症Ebstein奇形の90.0%で,早期新生児期に外科的介入を要した.7例にStarnes手術を施行したが,内科管理のみで乗り越えた症例やPDA結紮のみでそれ以降手術介入なく経過している症例も認めた.全体の死亡率は30.0%と予後不良であったが,新生児期を乗り越えた症例はいずれも経過良好であった.症例毎に外科的介入の必要性およびタイミングを見極めることが肝要と考えられる.