[I-P01-2-03] 双胎間輸血症候群に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を施行し出生した孤立性右室低形成の1例
キーワード:双胎間輸血症候群, 胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術, 孤立性右室低形成
【背景】一絨毛膜(MD)双胎の双胎間輸血症候群 (TTTS) に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)は治療成績が良好であり第1選択となっている. MD双胎では先天性心疾患発症率が高く, 特に右室流出路異常が知られている. 今回, TTTSに対してFLP治療を行ったMD双胎の受血児(以下、本児)に孤立性右室低形成を発症した1例を経験したため報告する. 【症例】MD双胎の受血児. 母体40歳, 0経妊, 凍結融解胚移植で妊娠され, 妊娠7週4日でMD双胎が判明し, 妊娠20週3日に妊婦健診でTTTSが疑われ胎児治療目的に当院へ紹介された. 初診時には両児とも心形態異常を認めなかった. 妊娠21週4日にFLPを実施しTTTSは改善傾向となったが, 本児の右室流出路に順行性血流が認められず, 解剖学的ないし機能的な肺動脈閉鎖が疑われた. 妊娠30週5日に本児側の破水があり, 入院管理していたが妊娠31週2日に陣痛が発来し、緊急帝王切開で出生した. Apgarスコア4/8, 体重1561gで出生した. 出生後の心臓超音波検査では三尖弁のサイズはz valueが-0.59の94% normalで保たれていたが右室心尖部の低形成を認めた. 通過血流は乏しくプロスタグランジン製剤で動脈管の開存を維持した. 日齢2から肺動脈弁を通過する順行性血流が認められたためプロスタグランジン製剤を中止した. 最終的に肺動脈弁狭窄は認めず, 孤立性右室低形成の診断とした. 卵円孔は右左シャントであり、SpO2 90%程度の軽度チアノーゼを認めるのみで退院した. 【結論】TTTS受血児の孤立性右室低形成発症の報告はまれである. 本症例は孤立性右室低形成の胎内での経過を追えた稀な一例である. 重症肺動脈弁狭窄との鑑別には, 肺動脈弁の形態および血流の注意深い経過観察が必要である.