[I-P01-2-04] 胎児超音波検査で下大静脈拡大所見より出生前診断し得た先天性門脈体循環シャントの1例
キーワード:先天性門脈体循環シャント, 胎児超音波検査, 下大静脈拡大
【背景】先天性門脈体循環シャント(CPSS)は3万出生に1例と稀な先天性血管奇形だが、門脈血が体循環系に直接流入し新生児胆汁うっ滞の原因となるため出生前診断の意義は大きい。胎児超音波検査で下大静脈(IVC)拡大所見からCPSSを出生前診断し得た1例を報告する。【症例】母体は妊娠36週にIVC拡大所見を認め精査目的に当院へ紹介となった。胎児超音波検査で推定体重2,300g、拡大したIVCは脊柱右側を走行し右房と接続していた。心内構造に異常は無く、胃泡は左側、肺静脈は左右とも左房に還流しており共通肺静脈腔(CPVC)も認めなかった。臍静脈は太く観察された。肝臓内で臍静脈-静脈管-IVCへの血流以外に脾静脈-門脈-IVCに流入する様子が確認できCPSSと診断した。在胎38週2日、2,825gで経膣分娩出生、生後の超音波検査でもIVCは縦径5.9mmと拡大所見を認めた。門脈からIVCへのシャントルートを確認し肝内型CPSSと診断した。肺高血圧は生理的範囲内で経過した。後のG-band検査で21trisomyと診断された。アンモニアやガラクトースの上昇はなく、総胆汁酸とγ-GTPの軽度上昇を認めるのみで、ウルソデオキシコール酸内服で経過観察とし日齢27で退院となった。生後3ヶ月でシャントは自然閉鎖、総胆汁酸とγ-GTPも正常化した。生後8ヶ月の時点で肝不全の兆候は認めていない。【考察】胎児期には臍静脈血の約45%が肝循環に、55%が静脈管を経由してIVCへ送られる。本症例では臍静脈が太く、肝実質を経由する臍静脈血流が増多しIVCへのシャントルートが形成された可能性があった。生後に臍静脈血流が途絶えることでシャント血流も減少し、CPSSの自然閉鎖につながったものと考えられた。胎児IVC拡大所見は総肺静脈還流異常症下心臓型との鑑別が重要である。本症例では初診時が36週と胎児心臓スクリーニングには不利な週数であったが、CPVCの存在を否定し得たため鑑別可能であった。