[I-P01-5-05] Vectorcardiogram and cardiovascular function after Fontan procedure
Keywords:ベクトル心電図, フォンタン術後, 心血管機能
背景と目的:ベクトル心電図は心起電力を立体的に観察する方法である。記録方法が煩雑であり、臨床応用が困難であったが標準12誘導心電図から算出する方法が報告され、脱分極ベクトルと再分極ベクトルの解離(空間QRS-T夾角の開大)は心室性不整脈や心筋障害との関連が明らかとなっている。フォンタン循環では駆動圧を担う心室の心筋効率低下と線維化を伴う心筋リモデリングが指摘されていることに着目し、空間QRS-T夾角はフォンタン循環不全の早期指標となるという仮説を検証した。対象と方法: 2022年1月から2023年12月に当院で心臓カテーテル検査を施行したフォンタン術後患者51例(年齢中央値:11.7歳[2.3-35.4])を対象として、安静時心電図から空間QRS-T夾角(spatial QRS-T angle:以下spQRS-T)を算出し、循環動態指標(中心静脈圧:CVP、心室拡張末期圧:EDP、駆出率: EF、BNP、AST、ALT、LDH、γGTP)との関連を検討した。また直近のHolter心電図解析が可能であった43例については、総心拍数:THB、min HR、max HR、mean HR、PAC、PVCとspQRS-Tとの関連について検討した。結果と考察:spQRS-Tは年齢やBMIとの相関はみられず、全年齢での検討ではspQRS-Tと各指標との関係性は明らかでなかった。青年期までは、正常であってもsp-QRS-Tが開大してばらつきも大きいとの報告があり、13歳以上に限定して検討するとspQRS-T開大は高いCVP、EDPと関連し(CVP:p=0.0367, EDP:p=0.0400)、心室機能障害を示唆すると考えられた。また全年齢でANCOVAを用いて年齢調整を行うと、高いCVPとspQRS-T開大の関連が示された(p=0.0233)。spQRS-T開大は高血圧や左室拡張障害との関連性が指摘されており、今回の結果は心室拡張障害を背景としたフォンタン循環不全を示していると推察された。結論:spQRS-T開大はフォンタン循環不全の早期指標となる可能性がある。