[I-P01-6-04] 急性汎発性発疹性膿疱症を契機に川崎病を発症した3歳男児
キーワード:川崎病, 急性汎発性発疹性膿疱症, 薬疹
【背景】急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)は浮腫性紅斑を背景に多数の無菌性膿疱が出現する稀な疾患である.AGEPの90%が,薬剤が原因で生じるとされる.川崎病でもAGEP様の膿胞を認めることがある.AGEPは一般に良好な経過をたどるが,川崎病では適切な治療が遅れると冠動脈病変を生じるリスクがある.【症例】症例は3歳男児で,5日間持続する発熱と皮疹のため,当科を紹介受診した.体幹部は紅斑が主体で,鼠径部や肘関節部に多数の膿胞を認めた.前医でカルボシステインやアセトアミノフェンの投与を受けており,皮疹の性状からAGEPと診断した.薬剤を中止し,入院でプレドニゾロンを投与したところ,翌日には解熱し,2日程度の経過で膿疱は消退した.しかし,入院5日目より再度発熱を認め,眼球結膜充血,口唇紅潮,体幹部の紅斑,四肢末端の硬性浮腫が出現した.川崎病主要症状5/6を満たし,川崎病と診断した.ガンマグロブリン静注とアスピリンで治療し,入院7日目には解熱した.その後,膜様落屑を確認した.薬剤リンパ球刺激試験では,カルボシステインがSI値199%(カットオフ>180%)であった.【考察】AGEPと川崎病はどちらも発熱と皮疹を呈し,鑑別が容易でない場合もある.AGEPで粘膜症状を呈することは少なく,眼球結膜充血の有無が両者の鑑別に有用であると考えらえた.AGEPの発症機序には感作したT細胞によるIV型のアレルギーであると考えられている.一方で川崎病の発症機序は不明であるが,自然免疫系の関与が示唆されており,両疾患の発症機序は異なっている.本症例ではカルボシステインを原因薬剤とするAGEPに伴う皮疹が川崎病主要症状に先行して認められた.この皮膚病変部から放出されたdamage-associated molecular patternsが自然免疫の活性化を引き起こし,川崎病発症の誘因となったと考えた.