[I-P01-6-10] 冠動脈対側冠動脈洞起始の7症例
キーワード:冠動脈起始異常, 冠動脈対側冠動脈洞起始, 心臓突然死
【背景】冠動脈対側冠動脈洞起始(AAOCA: anomalous aortic origin of coronary artery)は小児において突然死をきたしうる疾患であるが,無症状の症例があることや,経胸壁心エコー(TTE)による描出が困難で,しばしば早期診断できないことがある.【目的】AAOCAの診断と管理について考察する.【方法】2014年~2024年の10年間に当院でAAOCAと診断した症例について診療録を後方視的に検討した.【結果】7症例(男4例,女3例)あり,診断時年齢は1か月~15歳(中央値4歳)であった.AAOLCAが3例で,そのうち右冠動脈洞起始が1例,無冠動脈洞起始が2例,AAORCAが4例ですべて左冠動脈洞起始であった.4例は虚血症状から診断し,他の3例は偶発的に診断された.全例TTEを行い,3例は初回検査で,4例は再検査でAAOCAを疑い,造影CTなどで確定診断した.心筋虚血,心原性ショックから診断に至った2例はVA-ECMOを,うち1例は冠動脈unroofing術が行われたが, ECMO離脱ができず他施設で心臓移植を行った.もう1例も心筋障害が回復せず重度の低酸素性虚血性脳症を合併し,死亡した.胸痛から診断に至った2例はunroofing術を行い,偶発的に診断した3例は心筋虚血症状を認めず,慎重なフォローアップを継続している.【考察】小児における突然死の原因となるAAOCAは,無症状では,心電図変化がなく,TTEでの診断が困難なことがしばしばあり,精査や診断,治療が遅れる原因となる.特に胸痛を訴える患者において,AAOCAの除外ができない場合は,冠動脈カラードプラ法を併用したTTEの反復や,造影CTで評価を行うことが必要である.また,初発症状で心筋虚血から循環不全を呈する症例においては,市民レベルでの適切な質の高い蘇生,ドクターカーの充実といったプレホスピタルケアの向上が予後改善につながると考えられる.