[I-P02-1-06] 両大血管右室起始症修復術後遠隔期に肺高血圧crisisにより死亡した歌舞伎症候群の一例
キーワード:歌舞伎症候群, PH crisis, ICR
【諸言】歌舞伎症候群は先天性心疾患(CHD)に加えて、骨格異常や嚥下機能障害などの多系統障害を伴うことが多い。今回、両大血管右室起始症(DORV)に対する心内修復術(ICR) 半年後に、気道感染を契機としたPH crisisを来たし死亡した一例を経験した。歌舞伎症候群のCHDに対するICR施行時の注意点について文献的考察を交えて報告する。【症例】在胎34週1673gで出生した、両大血管右室起始症、僧帽弁狭窄症、左室低形成、心房中隔欠損症、大動脈縮窄症、動脈管開存症の男児。KMT2D遺伝子変異により歌舞伎症候群と診断し、日齢4に大動脈縮窄症修復術、肺動脈絞扼術をおこなった。1歳8か月の心臓カテーテル検査で左室容積は42ml/m2(84%N)、Rpは3.68WU*m2、平均肺動脈圧は20mmHgと強いPHは認めなかった。併存疾患に慢性肺疾患、胸郭変形、左声帯麻痺があり、生後から嚥下障害と慢性呼吸不全を認めていた。誤嚥性肺炎および急性呼吸不全を繰り返し、ICR前に2回の挿管, PICU入院歴があり気管切開も検討していた。肺炎による入院歴のいずれでもPHは認めずNO吸入療法は要さなかった。2歳7か月にICRを施行し術後18日で退院した。術後1.5か月で誤嚥性肺炎を発症し挿管管理を要したが、気管切開は行わずに退院した。術後半年で再び肺炎で気管挿管を要した。入院当日から強いPHを認めNO吸入療法を施行したが、PH crisisを繰り返し死亡した。【結語】歌舞伎症候群の原因の一つであるKMT2D遺伝子異常は肺高血圧症のリスクであることを示唆する症例報告があり、本症例においてもPH の増悪要因であった可能性がある。将来PHを発症するリスクはCHDに対する治療戦略を練るうえで重要であり、今後症例の集積が必要である。特に気道感染を繰り返しやすいKMT2D遺伝子異常の症例では、PHの観点から、ICR前に気道管理についても十分に検討する必要がある。