[I-P02-1-07] 当院におけるプロピオン酸血症患者16症例の検討と心機能低下を認めた2例の経過
キーワード:プロピオン酸血症, 心筋症, QT延長症候群
【背景】プロピオン酸血症は、プロピオニルCoAカルボキシラーゼの活性低下により有機酸が蓄積する先天代謝異常症である。心合併症として心筋症やQT延長症候群が挙げられるが、古典的には有病者が45万人に1人と非常に稀な疾患と考えられていた (1999年全国調査) ため、心臓の経過に関する認知度は高くない。一方で、2014年に開始された新生児タンデムマススクリーニングにより、“最軽症型”プロピオン酸血症の患者が多く発見され、有病者は5万人に1人に上昇した。しかし、2014年以降の患者がほとんどであるため、最軽症型の心合併症を含む予後に関しては不明な点が多い。そこで、先天代謝異常症の拠点施設である当院において、最軽症型を含むプロピオン酸血症患者の心臓関連の検査結果を、心収縮能低下を認めた患者の経過とともに報告する。【方法】当院に通院中のプロピオン酸血症患者16名を対象とし、心機能異常、心電図異常の有無を後方視的に検討した。【結果】対象患者16名の内、最軽症型に分類された患者は7名で、年齢は3歳から9歳であった。最軽症型の患者7名の内4名は心電図検査を施行されていたが、QT延長を含め異常を認めた症例はいなかった。3名に心エコーが実施され、心筋症、収縮能低下を認めた患者はいなかった。7名全員に心不全症状はなかった。最軽症型を除く9名の中には心電図異常として、軽度のQT延長を疑う患者が1名いた。心収縮能の低下(EF<50%)を認めたのは2名であり、いずれも成人に達した症例であった。1名は拡張型心筋症の診断で、同期不全・心室細動に対し両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器が導入されていた。【結語】プロピオン酸血症の患者は成人期に重大な心イベントを合併し得る。最軽症型については心合併症を疑う症例はいなかったが、成人の症例がいないため、心機能、心電図に関して今後の継続的なフォローアップが必要である。