第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

胎児心臓病学

ポスター発表(I-P02-2)
胎児心臓病学2

2024年7月11日(木) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:三好 剛一(国立循環器病研究センター 研究振興部)

[I-P02-2-07] PPHNを合併したEbstein病の臨床経過 -非circular shunt症例に対する胎児治療の可能性-

清野 精康, 高橋 卓也, 斎藤 完治, 佐藤 啓, 中野 智, 齋木 宏文 (岩手医科大学 医学部 小児科学講座)

キーワード:Ebstein's disease, Fetal therapy, Circular shunt

背景:Ebstein病は三尖弁や右室の形態・機能により多彩な病態をきたす.重症型では胎児期・新生児期にうっ血性心不全を発症し,容易に循環動態維持困難となりうるため周到な治療戦略が必要である.今回,新生児期に動脈管が閉鎖せず循環動態の破綻を生じ,早期手術介入を要した症例を経験したので報告する.症例:在胎36週で紹介になった胎児症例.在胎36週に急速な心拡大を指摘され,当院紹介.心胸郭面積比50%で高度三尖弁逆流を認め,plasteringの所見からEbstein病と判断した.TRPG 40mmHgと右室圧は充分高く,動脈管は肺動脈から大動脈方向に流れる生理的パターンであった.以上から心拡大は著明であるが,肺血管抵抗低下に伴い,循環適応可能な症例と判断した.胎児期には増悪リスクが高いことから早期娩出も検討されたが,家族の希望等により陣痛発来をまつ方針となった.しかしながら経過中に胎児徐脈を認めたため,37週6日に緊急帝王切開で出生した.体重2238g,AP 1(1分)/3(5分)/5(10分)であった.出生後にもTRPG 74mmHgで右室圧は充分高く,動脈管はRL shuntでPPHNの病態を呈した.卵円孔は充分な交通を認めた.早期肺高血圧寛解を目指し呼吸管理・NO吸入療法を開始し,次第に循環は安定した.利尿期を迎え,経腸栄養を開始しながら肺血管拡張薬を内服に移行したが,動脈管に全く閉鎖傾向が見られず,ショックに至った.動脈管は閉鎖傾向がなかったため,日齢6に緊急動脈管閉鎖および右房plicationを行った.考察:右心系拡大とともに左心系拡張障害が主病態であるEbstein病は, 左心系容量負荷に脆弱である.PHが遷延し右室圧低下が早期に得られなかったことに加え,肺血管拡張薬に伴う肺血管抵抗変動が,動脈管による体循環stealに影響し短期的に循環不全・臓器障害に至った.近年胎児治療による動脈管閉鎖の試みが散見されるが,動脈管の閉鎖特性を判断するうえでも重要な手技となる可能性がある.