[I-P02-4-05] 内胸動脈温存を目指した体肺動脈側副血管に対する選択的血管塞栓術のFontan術後経過への影響
キーワード:フォンタン, 体肺動脈側副血管, コイル塞栓術
【諸言】単心室の多くの症例で体肺動脈側副血管(APCs)の発達を認め, 一般にFontan術前にAPCsに対する塞栓術(TAE)が施行される. 多量のAPCsを伴う拡張した内胸動脈(ITA)に対しTAEを行う事があるが, 治療方針は各施設に委ねられている. 当院では極力ITA温存を目指し, 選択的なAPCs塞栓(SEAPCs: selective embolization of APCs)を行っている. 【目的】SEAPCsのFontan術後経過への影響とITAの術後経過の検討.【対象】2011年1月~2023年12月に当院でFontan前後に心カテを施行された症例.【方法】 術前のITA径を体表面積で補正したITA index (ITAI)から拡張なし群(N群)と拡張群(D群)に分け, Fontan前のNakata index(NI), 造影でのAPCsと肺動脈の描出程度から算出したAPCs score(0~6), Fontan術後経過を比較し, さらに, Fontan後のITAIを術前と比較した. 【結果】対象は36例で, 15例をN群, 21例をD群とした(ITAI: 10.2±1.1 vs. 13.4±1.1mm/m2, P<0.001). N群, D群のFontan前のAPC score, NIはそれぞれ3.07±0.83 vs. 4.24±0.70(P<0.001), 289.2±93.1 vs. 197.3±66.4 mm2/m2(P=0.002)で, ITAIとAPC scoreに正の相関(P<0.001, r=0.697)を, NIに負の相関(P=0.015, r=-0.419)を認めた. また, Fontan後の人工呼吸管理期間(1(1-16) vs. 1(1-17)日, P=0.597), ドレーン挿入期間(5(3-26) vs. 7(4-21)日, P=0.285), 入院期間(25.0±8.3 vs. 27.8±17.9日, P=0.582)は両群間で有意差は認めなかった. Fontan前後の両方で計測しえた61 (右30/左31) 本のITAIは術前 5.96±1.36 mm/m2に対し, 術後4.30±1.36 mm/m2と有意な狭小化(P<0.001)を認めた.【考察・結語】N群とD群で術後経過に有意差は認めず, APCsが多くITAの拡張を認めても, SEAPCsで十分な効果が得られる可能性がある. また, Fontan後に狭小化したITAは将来的に冠動脈バイパス術にも使用できる可能性もあり, ITAに対するTAEの適応は慎重に検討する必要がある.