[I-P02-6-06] 冠動脈狭窄病変を合併した総動脈幹症の臨床像
キーワード:冠動脈狭窄, 総動脈幹症, 心筋虚血
【背景】総動脈幹症は冠動脈異常を生じやすく,truncal valve(TrV)の異形成による逆流(R)と狭窄の影響もあるため術前後の冠血流低下のリスクとなりうる. 【目的】総動脈幹症において冠動脈狭窄が臨床経過に及ぼす影響を検討すること.【方法】対象は2004年以降に当院で心内修復術を行った総動脈幹症22例.冠動脈狭窄(CS)群8例と非冠動脈狭窄(N)群14例の臨床経過を後方視的に検討した.【結果】CS群,N群間で在胎週数(39.3週 vs 38.5週),出生体重(2.77kg vs 2.76kg),中等度以上のTrVR合併(25.0% vs 35.7%),初回介入日齢(10.1日 vs 14.8日),手術日齢(21.1日 vs 28.6日)に有意差はなし.CS群のうち壁内走行(IM)5例,開口部狭窄(OS)3例で,6例は心内修復術と同時に冠動脈形成(入口部切開+内膜固定,またはunroofing)を施行.IMの1例は遠隔期に診断され,再手術時に形成術を追加.冠動脈形成術施行例は術後心筋虚血認めなかったが,形成術未施行の1例は心内修復術の周術期に心不全で死亡.術前に一過性ST変化を認めたのはOS2例.その2例はmoderate TrVRを合併.CS群の他6例のTrVRは軽度以下であった(mild:2,none:4).また,N群のうち,ST変化を生じたのは1例のみでsevere TrVRを合併,かつ早産・低出生体重児(在胎35週2日,2022g出生)であった. 【まとめ】冠動脈入口部狭窄を伴っていても単独では術前虚血イベントを生じることはなかった.冠動脈病変はTrVRと肺血流増多の結果,拡張期血流低下で起こる心筋虚血の閾値を下げると考えられる.ただし,術前の虚血イベントがなくても冠動脈狭窄は周術期管理において懸念を残すため,積極的介入を検討すべきである.また,TrVの異形成で冠動脈狭窄が生じるため,中等度以上の逆流を認める場合は特に冠血流に留意して精査と管理を要する.