[I-P02-6-08] DORV術後遠隔期の若年女性に発症した冠攣縮性狭心症の1例
キーワード:冠攣縮性狭心症, 狭心症, 冠動脈疾患
【背景】成人先天性心疾患(ACHD)患者が高齢になるにつれ冠動脈疾患(CAD)の有病率は上昇するとされ、非ACHD患者に比べてCADのリスクが高いことが研究で示されているものの、冠攣縮性狭心症(VSA)についてのまとまった報告はなかった。VSAは心臓の冠動脈が急激に狭窄し、胸痛を引き起こす病態であり、一般的に予後良好な疾患とされる。中高齢者で頻度が高く若年女性における胸痛の原因としては稀である。我々は今回、両大血管左室起始症(DORV)の術後遠隔期において発症した胸痛で、カテーテル検査によりVSAの診断に至った26歳女性の一例を経験したので報告する。【症例】26歳女性。胎児診断なし。チアノーゼのため日齢1で近医NICUへ入院。DORV,肺動脈閉鎖(PA)の診断を受け、前医に転院となった。新生児期にmBT shunt手術、5歳時にRastelli手術、12歳時にはconduit 交換術を施行された。以降、外来で経過観察され、転居に伴って、20歳時に当院を紹介受診し、特に問題なく経過していた。22歳ごろから起床時の胸痛と息苦しさの訴えが半年に一度程度見られていた。25歳になってから頻度が増加していたものの、発作時の心電図変化や心筋逸脱酵素の上昇は検出されていなかった。胸痛時に硝酸薬の舌下噴霧で改善するため、冠攣縮性狭心症の診断のため冠動脈造影検査とスパズム誘発試験目的に入院となった。カテーテル検査を施行し、冠動脈造影では有意狭窄はみられなかった。アセチルコリン負荷試験を行うと、冠動脈にびまん性の高度な血管収縮が誘発され、VSAの診断に至った。退院時から治療としてCa拮抗薬の内服を開始した。【結論】DORV修復術後の若年女性におけるVSAの一例を経験した。若年者においてVSAの発症は稀であるが、胸痛を訴える場合には、VSAを含む冠動脈疾患の可能性を考慮する必要がある。適切な治療を行うことができれば予後良好な疾患であり、早期に診断・治療に至ることで予後改善が見込めるものと考えられる。