[I-P02-6-09] カンジダ細胞壁多糖誘導マウス血管炎におけるSyk阻害薬の血管炎抑制効果
キーワード:川崎病, 動物実験, Syk阻害薬
【背景】近年、川崎病では自然免疫系の病態への関与が注目されている。カンジダ・アルビカンス水溶性多糖画分(CAWS)を用いた血管炎マウスモデルでは、冠動脈を含む心基部大動脈に高率に血管炎を生じる。本モデルの血管炎発症にはspleen tyrosine kinase (Syk)を介した自然免疫の活性化の関与が報告されている。以前本学会で、CAWSモデルに対しSyk阻害薬2剤を投与したところ、いずれも血管炎抑制効果を示したことを報告した。【目的】本モデルのCAWS投与後の(1) 心基部大動脈炎、冠動脈炎の経時的推移、(2) 血清サイトカイン動態の経時的推移、(3) Syk阻害薬による(1)(2)への影響について検討する。【材料・方法】CAWS 200μg/日を4週齢、雄性のDBA/2に連続5日間、腹腔内投与し、投与終了翌日よりSyk阻害薬ないし溶媒を連日腹腔内投与した。CAWS投与開始日を第1日とし、第0, 1, 3, 5, 6, 12, 26日に心臓採血、諸臓器採取を行い、血清サイトカインを測定した。【結果】CAWS投与により、(1) 第6日時点で心基部大動脈、冠動脈に好中球、マクロファージ主体の炎症細胞浸潤が観察され、第12日時点で汎血管炎の形成に至った。その後第26日時点で炎症は拡大していた。(2) IL-5, IL-6, INFγ, TNF-α, KC/GROが第6日以前に、IL1β、IL-2, IL-10, KC/GROが第6日以降に上昇した。(3) Syk阻害薬投与により第12日群、第26日群いずれも汎血管炎の発生は完全に抑制され、IL-5, IL-6, INFγ, TNF-α, KC/GRO, IL1β、IL-2, IL-10は上昇が抑制された。【要約】起炎物質投与後第6日時点で血管炎の初期像が、第12日以降で汎血管炎の形成がみられた。CAWS投与期間に上昇するサイトカインは血管炎の発生に、CAWS投与終了後に上昇するサイトカインは血管炎の進展に関与している可能性が考えられ、いずれもSyk阻害薬により抑制された。今回の検討ではSyk阻害薬は血管炎の進展を抑制したと考えられた。