[I-P02-6-10] 川崎病に対するIVIG治療後にBNPが増加する症例の特徴
キーワード:川崎病, BNP, バイオマーカー
【背景】川崎病において、BNPは診断や冠動脈病変、IVIG不応などのリスクを予測するバイオマーカーとして有用であるが、IVIG治療後のBNPの変化について検討した報告は少ない。【方法】当科に2019年7月から2023年1月に入院し、川崎病に対してIVIGによる治療を受けた症例のうち、治療開始前及び治療開始数日後にBNPを測定された症例を対象とし、治療開始前と比較しBNPが50pg/ml以上増加した症例の特徴について検討した。【結果】当科で対象期間の間に川崎病に対してIVIG 2g/kgによる治療を受けた症例は139例で、そのうちBNPを治療開始前及び治療開始数日後に測定された症例は120例であった。そのうち、BNPが治療開始前と比較し50 pg/ml以上増加した症例(A群)は16例で、それ以外の症例(B群)は104例であった。治療開始日から数日後のBNP測定までの日数の中央値は3日[四分位範囲3-3]であった。A群の症例では月齢が高く(中央値 44[四分位範囲 20.5-67] vs 20[10-38.5],p=0.004)、治療開始前の好中球数の割合が多く(80.6%[68.9-90.1] vs 65.4%[51.2-74.0],p=0.003)、治療開始前のASTが高値(47.5 IU/L[30-288] vs 34 IU/L[27-53],p=0.02)であった。治療開始前のBNP(25 pg/ml [12-42] vs 30 pg/ml[9-72],p=0.66)やIVIG不応例の割合(6例[37.5%] vs 21例[20.2%],p=0.19)は両群で有意差は認めなかった。一過性の冠動脈拡大を来した症例はA群にはおらず、B群に5例いたが、いずれも発症1か月後には正常化していた。【結語】年長児で治療開始前の好中球数の割合が高い、ASTが高値などの炎症が比較的強い症例の場合はIVIG 2g/kgの治療による心負荷を来す可能性があり、慎重な経過観察が必要と考えられる。