[I-P03-1-07] 体肺シャント術後に循環不全をきたした肺動脈閉鎖を伴うcongenitally unguarded tricuspid valve orificeの一例
キーワード:congenitally unguarded tricuspid valve orifice, CUTVO, 右室縫縮
【背景】congenitally unguarded tricuspid valve orifice(CUTVO)は、先天的に三尖弁尖が欠損し、重度の三尖弁逆流、著明な右心系拡大を呈する稀な心疾患で、拡大した右心系により左室の心拍出量の低下をきたし、重度の心不全を呈することがある。【症例】妊娠23週に胎児エコースクリーニングで右心系拡大を指摘され、妊娠25週で当院に紹介、胎児心エコーで肺動脈閉鎖を伴うCUTVOと診断。妊娠38週2日に体重2792gで出生。出生後は循環不全なく経過、日齢2まで挿管管理を要したが、その後はネーザルハイフロー管理で呼吸も安定していた。出生後の心エコーで三尖弁尖は確認されず、肺動脈閉鎖を伴うCUTVO、末梢性左肺動脈狭窄、動脈管開存と確定診断した。リポプロスタグランジン製剤持続静注を開始し、生後2か月で待機的に体肺シャント術、左肺動脈形成術、右房化右室縫縮術を行った。術後経過は良好で、術後9日に抜管したが、術後15日に啼泣後に低酸素血症、徐脈をきたし、心肺蘇生を要した。心エコーでシャント閉塞を認め、ECMO導入、外科的シャント閉塞解除、および経皮的シャントバルン拡張術を行った。翌日にECMOを離脱したが、閉胸後循環不全となり、再度ECMO管理を要した。術後28日に開胸のままECMOを離脱。その後も循環不全が改善しないため、拡大した右心系による左室拡張障害が原因と考え、術後59日に右室縫縮、三尖弁閉鎖を行った。手術終了時に閉胸し、術後の循環動態は安定。術中所見では三尖弁は痕跡的な弁輪のみで、弁尖は全く認められなかった。【考察】本症例は術前の循環が成り立っていたため、初回手術で体肺シャント術のみを行ったが、左室拡張障害に、シャントによる容量負荷が加わり、急変後は循環が成り立たなかった。肺動脈閉鎖を伴うCUTVOでは、拡大した右心系による圧排で、左室拡張障害が持続しており、循環破綻をきたすリスクが高いため早期から右房右室縫縮を行うのが望ましいと考えられた。