第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

一般心臓病学

ポスター発表(I-P03-1)
一般心臓病学

2024年7月11日(木) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:中山 智孝(高知赤十字病院 小児科)

[I-P03-1-08] 抗凝固関連腎症と小児および先天性心疾患患者の関連

神野 太郎, 水野 風音, 高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)

キーワード:抗凝固関連腎症, ワーファリン, 乳児

【背景】近年、抗凝固関連腎症が認識されるようになったが、病態は不明で過剰抗凝固による腎の糸球体出血と腎尿細管閉塞とされる。診断の難しさと認知度の低さから診断基準もなく正確な発生頻度も不明である。高齢者、心不全は抗凝固関連腎症のリスクとされるが、小児及び先天性心疾患患者の報告はない。【方法】当院の診療録を後方視的に検討した。2013年1月から2023年12月に同院小児科で抗凝固薬を処方した患者のうち開始前後でPT-INR、BUN、Crが複数回記録されている患者21名を対象とした。造影剤腎症の基準(前値より25%以上の血清Cr上昇)、KDIGOによる急性腎障害の指標(前値より50%の血清Cr上昇)、INR>3.0を認めた患者の有無を調べた。【結果】抗凝固薬導入理由は弁置換および弁形成後7例、TCPC conversion後1例、川崎病性冠動脈瘤6例、心房粗細動4例、深部静脈血栓症および動静脈瘻2例、BT shunt1例、導入時状況はICU入室時8例、一般病床13例、導入時年齢は月齢8‐81歳(中央値17歳)、平均追跡期間は1カ月-12年(中央値2年)だった。使用した抗凝固薬はワーファリン16例、アピキサバン4例、エドキサバン1例だった。頻脈性不整脈による心不全入院時にINR>3.0以上の上昇をともなう50%以上のCr上昇を認めた17歳TCPC例が1例(INR 3.85, Cr 0.59→1.04, 76%上昇)あり, 心不全治療と抗凝固薬の用量調整でINR 1.79, Cr 0.61に改善した。導入半年以内に25%以上のCr上昇を認めた心房粗細動を合併した81歳TOFが1例(0.88→1.19 31%上昇)、月齢11川崎病性冠動脈瘤が1例(Cr 0.2→0.25 40%上昇)あり、いずれも自然軽快した。【考察】血尿などの症状はないが、基準以上の血清Cr上昇を認めた患者が3名(33%)いた。1名は乳児であり、低月齢もリスクとなる可能性がある。心不全増悪時にINR>3.0を伴ったときは特に本症も念頭に入れる必要がある。また、凝固異常を伴いやすいチアノーゼ性心疾患やTCPC術後などにも注意したい。