[I-P03-2-01] 乳児期早期に拡張肺動脈による左冠動脈圧迫、心筋虚血をきたしたファロー四徴肺動脈弁欠損:心室細動が初発症状
キーワード:ファロー四徴肺動脈弁欠損, 拡張肺動脈, 冠動脈圧迫
【背景】ファロー四徴肺動脈弁欠損 (TOF/APV)患者では拡張肺動脈による気道系の圧迫に伴う呼吸障害が問題になることが多い。拡張肺動脈による冠動脈圧迫、心筋虚血は極めて稀な合併症で、過去の報告も限られており全容が不明である。【症例】在胎38週3日、体重2,253gで出生したTOF/APVの男児。生後気管挿管は要さず、非侵襲的陽圧管理(NPPV)で呼吸管理可能であった。造影CTと心臓超音波検査では左主幹動脈と拡張した主肺動脈が近接していたが、心筋虚血所見は認めなかった。NPPV離脱困難であるため肺動脈縫縮術が必要と判断され、体重増加後に肺動脈縫縮術、心内修復術を行う方針とした。手術待機中の日齢61に心室細動を発症し、心肺蘇生により自己心拍が再開した。モニター心電図では発症数時間前から間欠的にSTが低下していた。蘇生後10時間で再度モニター心電図のST低下があり、12誘導心電図でaVR、V1のST上昇、ΙΙ、ΙΙΙ、aVF、V5-6のST低下を認めた。心臓超音波検査での左室壁運動の全周性低下や血液検査での心筋逸脱酵素上昇とあわせて、拡張肺動脈による左冠動脈圧迫、心筋虚血と診断した。肺動脈縫縮、主肺動脈離断、体肺動脈シャント手術を同日緊急で行った。以後、心筋虚血の再発はない。【考察】TOF/APVで拡張肺動脈により冠動脈圧迫をきたした過去の報告には乳児期早期例はなく、いずれも無症候で造影CTおよび冠動脈造影が診断の契機であった。肺動脈性肺高血圧に代表される肺動脈拡張をきたす疾患では、同様の機序での心筋虚血が報告されている。その頻度は決して低くないとされ、同疾患で突然死した患者の中に、認識されていない冠動脈圧迫例が存在する可能性を示唆する報告もある。【結論】肺動脈の著明な瘤状拡張が特徴であるTOF/APVでは、本例と同様に乳児期早期でも冠動脈圧迫、心筋虚血を発症し、致死的となる可能性があることを認識して管理する必要がある。