[I-P03-3-05] 単心室症における運動時の心周期の検討
キーワード:単心室, フォンタン, 拡張
【背景・目的】Fontan術後の単心室症における運動耐容能低下の一因として、心拍数増加が早期に心室拡張末期容積(EDV)、心拍出量を減少させることが指摘されている。心室の拡張機能障害や肺循環での血流制限などが機序として挙げられているが詳細は明らかでない。電気生理学的な要因に焦点を当て、電気伝導障害による拡張・収縮の時間変化が拡張時間の不足を招き、EDVを低下させる可能性について検討することを目的とした。【対象・方法】2022年8月から2024年2月に心肺運動負荷試験または運動負荷心電図検査を行ったFontan術後患者を対象とし、心拍数が30bpm以上増加し、心電図を解析可能な症例を抽出した(F群;12例)。II誘導のRR間隔・P波幅・PR間隔・QRS波幅・QT間隔・JT間隔を評価項目とし、3心拍の平均値を負荷前後で測定した。また、年齢と性別をマッチさせた正常心(N群;12例)でも同様の検討を行い、拡張時間の指標としてRR-QT、RR-JT、1-QT/RR、1-JT/RRを計算し、F群と比較した。【結果】F群は平均年齢11歳(7-17歳)、9.5±1.3METSの負荷により最大心拍数は162±20bpmであった。負荷前後で全ての評価項目は短縮傾向にあり、RR間隔・PR間隔・QT間隔・JT間隔が有意に短縮した。N群の負荷前の評価項目はF群と有意な差はなかった。負荷後ではF群のRR間隔がN群に比し長く(405±53ms vs 336±29ms (p=0.01))、拡張時間もF群が有意に長かった(RR-QT 148±35ms vs 99±19ms (p=0.003)、RR-JT 238±38ms vs 177±19ms (p<0.01))。一心拍中の拡張時間が占める割合もF群が有意に高値を示した(1-QT/RR 0.36±0.05 vs 0.29±0.05 (p=0.01)、1-JT/RR 0.59±0.03 vs 0.53±0.04(p<0.01))。【考察・結論】Fontan術後患者の最大運動時の拡張時間は健常者よりも長く、拡張時間の絶対値としては不足していないと考えられた。EDV低下は電気生理的な問題が主因でなく、心機能や血行動態に起因する相対的な拡張時間の不足と考えられる。