[I-P03-3-06] 2Dスペックルトラッキング法によるGlenn手術前後の心機能評価と心機能低下のリスク因子の検討
キーワード:Glenn手術, スペックルトラッキング, 心機能解析
背景:2Dスペックルトラッキング法は心室形態が複雑な先天性心疾患の心機能評価において有用な方法である。Fontan candidateの心機能は房室弁逆流や肺血流量など様々な要因により変動する。Glenn手術は血行動態が大きく変化し心機能変化をきたしうるが、Glenn手術前後での心機能変化についての報告は限られている。目的:Glenn手術前後での心機能変化を評価し、心機能悪化の予測因子を検討する。対象:2017年4月1日から2023年12月31日に当院にてGlenn手術を施行した左室型単心室18例。方法:Glenn術前・術後の心臓超音波四腔像から2Dスペックルトラッキング法を用いてGlobal Longitudinal Strain(GLS)を計測し、後方視的に心機能変化を評価した。また、Glenn後の心機能低下の有無を目的変数、Glenn前のカテーテル検査結果【心室拡張末期圧, 中心静脈圧, 平均肺動脈圧, 大動脈酸素飽和度, 肺血管抵抗, 肺動脈係数, 心係数, 肺体血流比】および手術所見【手術時月齢, 体重, 手術時間, 人工心肺時間】を説明変数とし、ロジスティック回帰分析を行い、Glenn後の心機能低下に寄与するリスク因子を抽出した。結果:疾患は三尖弁閉鎖7例、左室型単心室4例、純型肺動脈閉鎖3例、肺動脈弁狭窄3例、房室中隔欠損症1例であった。Glenn術前GLSの中央値は-19.98(-16.23, -31.22)、術後GLSの中央値は-17.39(-11.08, -21.45)であった。ベースラインの15%以上の心機能低下を来した症例は10例であり、Glenn前後で有意な心機能低下が見られた(P=0.002)。ロジスティック回帰分析では心機能低下に寄与する有意なリスク因子は抽出されず、手術時間、人工心肺時間が長い症例で心機能低下をきたす傾向が見られた(P=0.08, 0.09)。考察:本研究ではGlenn後に有意に心機能低下は見られたものの、そのリスク因子は見出せなかった。本研究は左室型単心室のみを対象としており、症例数も少なく、右室型単心室や両心室症例も含めた解析が望まれる。