[I-P03-5-01] 成人期にチアノーゼを契機に診断された右室低形成とキアリネットワークを伴う心房中隔欠損症の一例
キーワード:成人先天性心疾患, 心房中隔欠損症, 右室低形成
【背景】心房中隔欠損症(ASD)は一般的には左右短絡疾患として知られ, 肺血管閉塞性病変などを伴わない限り右左短絡に伴うチアノーゼは来さない。今回我々はチアノーゼを契機に診断されたASDを経験したため報告する。【症例】37歳男性。体重97kg。小児期より労作時呼吸困難感を自覚していたが通院歴なく特記すべき既往はない。COVID-19感染を契機に労作時SpO2 80%と低酸素血症を認めるようになった。呼吸器精査上は異常はなく, 心エコーでは両方向性短絡のASDを認めた。右心カテーテル検査でPAP24/12mmHg, PVR1.64W/Uと肺高血圧はなかったが, Qp/Qs 0.92と肺血流の低下を認めた。心臓MRIでRVEDVI 54.8ml/m2と右室低形成を認め, 右室容量低下に伴う右室コンプライアンスの低下から右左短絡を来している可能性を考えた。治療方針としてASD閉鎖のみでは右心不全が増強する可能性を考慮し,人工心肺(CPB)離脱後に著しいCVP上昇があればBidirectional Glenn(BDG)を追加する方針とした。心停止下で右房切開にて右房内を確認すると, Chiari network(CN)様のレース状構造物を広く認めた。これが三尖弁口を一部覆っており完全に除去した。ASDは二次孔欠損型で多孔性であったが, 形態や位置としては右左短絡を来し得る所見はなく, これをウシ心膜パッチにて閉鎖した。CPB離脱後CVP は15mmHgまでの上昇に留まり,右室内腔は術前より拡大し収縮能及び拡張能は良好であったためBDGを追加せずに手術終了とした。術後低酸素血症は改善し経過良好である。【考察】低酸素血症を契機に診断されるASDでは, PVRが上昇しEisenmenger化した状態が最も考えられるが, 本症例ではPVR上昇はなく当初は右室低形成が右左短絡の一因となっていると考えた。しかし, 術中所見からCN様の構造物により静脈血の右室への流入が阻害され心房間の右左短絡を生じ低酸素血症を来したのではないかと考えた。