[I-P03-5-02] 心房中隔欠損を伴わない部分肺静脈還流異常症の検討
キーワード:部分肺静脈環流異常症, intact atrial septum, 成人先天性心疾患
【背景】部分肺静脈還流異常症(PAPVR)は稀な先天性心疾患で心房中隔欠損症(ASD)に合併することが知られているが、ASDを伴わないPAPVRの報告も散見される。当施設で経験したASDを伴わないPAPVRについて検討を行った。【方法】当施設で診断したASDを伴わないPAPVRの性別、診断時年齢、診断に至った経緯、確定診断の検査法、PAPVRの還流部位、本数、心臓カテーテル検査の結果、治療方針を調査し検討した。【結果】当施設で2010年3月から2021年12月までに経験したASDを伴わないPAPVRは4例で、男2女2、年齢は13歳から68歳だった。PAPVRが診断されたのは肺高血圧症を疑い行った心臓カテーテル検査で1例。胸部レントゲン異常の精査で行った造影CT検査で1例。残る2例は心房性不整脈を有し経皮的心筋焼灼術を行うために左房形態精査目的で行った造影CT検査で1例、経皮的心筋焼灼術中に診断された1例で、最初からPAPVRを疑い診断された症例はなかった。また、PAPVRが診断される前に全例経胸壁心臓超音波検査(TTE)を行っており、全例で右心系の拡大を認めたがPAPVRは同定されなかった。造影CT検査でPAPVRの形態診断を行い、右上中肺静脈が上大静脈に還流した1例、左上肺静脈が垂直静脈から左無名静脈へ還流した1例、全右肺静脈が上大静脈へ還流した1例、右上肺静脈が上大静脈と左心房に重複して還流した1例を認め、様々な形態を有していた。肺体血流比(Qp/Qs)はそれぞれ1.4、1.6、2.0、2.3だった。Qp/Qsが2.0以上の2例は外科的に修復を行った。【考察】ASDを伴わないPAPVRは右心系の容量負荷を認め、還流異常の肺静脈の部位や本数は多彩な形態を呈し心負荷の程度もさまざまで、症例ごとに治療方針を考える必要がある。また、TTEでPAPVCの存在を確認する事は困難で、他の疾患の検査や治療中に診断されていた。ASDを認めず右心系が拡大する例ではPAPVRを疑う必要があり、確定診断や形態診断には造影CT検査が有用であった。