[I-P03-5-04] ファロー四徴症術後の成人患者に対する自己弁温存大動脈基部置換術の経験
キーワード:ファロー四徴症, 大動脈基部置換術, 成人先天性心疾患
【背景】自己弁温存大動脈基部置換術(valve-sparing aortic root replacement:VSRR)は、従来のBentall手術と比較して血栓塞栓症、感染などの人工弁関連合併症を伴わず、より生理的な血行動態が期待できることから適応が拡大している。しかし、先天性心疾患に伴う大動脈基部拡大に対するVSRR施行例の報告は限られている。当院で経験した、ファロー四徴症術後の大動脈基部拡大に対しVSRRを施行した3症例について報告する。【症例1】54歳男性。5歳時にファロー四徴症に対して心内修復術を施行。左肺動脈閉塞あり。心内修復術後49年経過。術前valsalva洞径60mm、中等度大動脈閉鎖不全あり。30mm Valsalva graftを用いてDavid手術(Reimplantation-VSRR)施行。人工心肺時間198分、大動脈遮断時間165分。術後8日目に退院。術後48ヶ月経過しており大動脈閉鎖不全の再増悪なし。【症例2】51歳女性。1歳時にファロー四徴症に対して心内修復術を施行し50年経過。valsalva洞径52mm、軽度大動脈閉鎖不全あり。重度肺動脈閉鎖不全症、重度三尖部閉鎖不全症を合併しており同時手術を計画した。30mm Valsalva graftを用いてDavid手術施行、同時に肺動脈弁置換術、三尖弁弁輪縫縮術を施行。人工心肺時間341分、大動脈遮断時間274分。術後10日目に退院。術後10カ月経過、大動脈閉鎖不全の再増悪なし。【症例3】44歳男性。3歳時にファロー四徴症に対して心内修復術を施行。33歳時に重度三尖弁閉鎖不全に対して三尖部形成術を施行。心内修復術後41年経過。術前valsalva洞径55mm、大動脈閉鎖不全はわずか。30mm Valsalva graftを用いてDavid手術施行。人工心肺時間185分、大動脈遮断時間148分。術後10日目に退院し外来フォロー中。【考察】3例とも術中、術後に合併症を認めず、経過順調である。CHD患者に対するVSRRは既報でも短期的には良好な成績が報告されているが、中長期的な成績については今後の症例蓄積が必要である。