[I-P03-6-04] 不完全型房室中隔欠損に甲状腺機能亢進症を合併し、重症心不全に至った1例
キーワード:房室中隔欠損, 甲状腺機能亢進症, 房室弁逆流
【はじめに】不全型房室中隔欠損(iAVSD)はASDの左右短絡に加え、房室弁逆流(AVVR)により心不全を呈する。一方, 甲状腺機能亢進症(HT)は高心拍出性心不全, 僧帽弁逸脱などの心血管系異常を認める。今回, iAVSDにHTを合併し重症心不全に至った症例を経験した。【症例】生来健康な3歳女児。3歳児健診で心雑音, 高身長(104cm, +3.1SD), 低体重(14kg, -2.2SD)を指摘され前医を受診し, iAVSD, 重度AVVRと診断され当科を紹介された。眼球突出や甲状腺腫大はないが, 多動と多汗を認めた。胸部X線でCTR 67 %, 肺血管陰影が著明に増強し, 心電図でHR 128 bpmの洞性頻脈, 左軸偏位, 1度房室ブロック, 心臓超音波検査で, 大きなASDと両側重度AVVRを認めた。心臓MRI検査(CMR)で, Qp/Qs=16.6/2.5=6.6 L/min/m2, RVEDVI 258 ml/m2, RVEF 54 %, LVEDVI 102 ml/m2, LVEF 47 %, 心臓カテーテル検査(Cath)で, mPAP 16 mmHg, LAP 10 mmHgであった。甲状腺機能検査で, TSH < 0.03 mIU/L, FT3 4.85 pg/mL, FT4 3.11 ng/dL, 甲状腺刺激抗体 346%であった。上記検査に加え, 甲状腺エコーでびまん性の腫大, 血流の増加を確認し, Basedow病に伴うHTを合併したiAVSDと診断し手術適応と判断した。術前心不全コントロールと, 周術期の甲状腺クリーゼの回避目的に HTの治療を開始し, 甲状腺機能が正常化した後に手術の方針とした。内服1ヶ月後に甲状腺機能は正常化も, 心電図, CMRで明らかな改善を認めずに手術を施行した。周術期も含め術後経過は良好で, 術後1年のCMRでQp/Qs=4.5/3.8=1.2 L/min/m2, RVEDVI 75.1 ml/m2, RVEF 62 %, LVEDVI 60.7 ml/m2, LVEF 64 %, Cathで, mPAP 12 mmHg, PAWP 6 mmHgであった。【結語】HTによる心血管系の異常は不可逆的となる場合もあるが, 本症例では診断後の速やかなHTの治療とiAVSDの手術介入により経過は良好であった。CHDにHTを合併した場合, 血行動態を増悪させる可能性があり注意が必要である。