[I-PAL-1] Circular shuntを伴った重症Ebstein病の出生前診断から外科治療へ;外科治療成績を含めた報告
キーワード:Ebstein奇形, 出生前診断, Starnes手術
【背景と目的】Ebstein病(EA)の重症度スペクトルは幅広くCircular shunt(CS)を伴った重症EAの外科治療成績は不良である。しかし近年、精度の高い胎児診断に伴って当院では計画的な外科治療の準備をすることが出来、良好な成績を収めている。CSを伴った重症EAの出生前診断から外科治療の一連の流れとその結果を含めて報告する。【対象と方法】CSは胎児エコーにて肺動脈弁逆流(PR)と共に臍帯動脈の拡張期血流の異常(血流途絶または逆行性)があるものと定義している。また、当院での重症EAの基本的な周産期治療方針は妊娠35週未満では胎児水腫をきたしても妊娠継続、妊娠35週以降ではCS症例、胎児水腫症例は計画的帝王切開し出生直後に主肺動脈結紮またはStarnes手術としている。対象は2012年から2024年の間でCSを伴った重症EAと診断され計画分娩で娩出した13例で後方視的に検討した。胎児水腫は4人に認めた。全例で心胸比がほぼ100%であった。平均の出生週数は36.6週(34.0-39.4週)、出生体重は2.24kg(2.10-3.22kg)、初回手術時日齢は0.5日(0-2日)であった。【結果】1例でNSAID母体投与による胎児治療が行われた。初回手術は6例で新生児期にStarnes手術を行った。出生直後に初回手術で主肺動脈結紮(PAL)を行った7例でLactateの上昇(ピーク平均104.8mmol/L,上昇幅平均58.5mmol/L)や尿量減少を認めたため術後3日以内(平均16時間)にStarnes手術を施行した。初回PALの患者群と初回Starnes手術の患者群でStarnes術後からの抜管までの期間、ICU滞在期間、入院期間に有意差はなかった。術後の循環動態は安定し全例でグレン手術を施行し感染により1例遠隔期に失ったが残りの12例の内8例はフォンタン手術に到達し4例は現在待機中である。【結語】胎児診断により計画的に分娩後の外科治療が可能となり術後の経過は非常に良好であった。出生直後にPRを制御して可及的速やかにStarnes手術を行うことが良好な成績の鍵となる。