[I-PD1-5] 心房筋生検による心房リモデリングと不整脈基質の組織病理学的評価
Keywords:不整脈基質, 心房生検, 心房心筋症
心房リモデリングとは、電気的リモデリング、機能的リモデリング、そして構造的リモデリングから構成され、相互に関連しながら時間依存性に心房全体のリモデリングが進行する。電気的リモデリングは心筋イオンチャネルの変化により、不応期の短縮をきたしリエントリーを促進する。機能的リモデリングは、心房収縮や拡張性の低下であり、心エコーや心臓MRIにより心房ストレインの低下として評価され、心不全発症や心原性塞栓症のリスクと関連する。構造的リモデリングのマクロな主要変化は心房拡大である。またカテーテルアブレーション例においては、構造的リモデリングをelectroanatomic mappingによるbipolar voltageにより評価できる。Voltageは心筋量の鋭敏な指標であり、構造的リモデリングの進行に伴う残存心筋量の減少によりvoltageが心房全体でびまん性に低下する。構造的リモデリングの進行により伝導遅延を生じ、それがリエントリーの基質となることで不整脈基質が進行する。また洞不全などの徐脈性不整脈の原因にもなる。我々は心腔内超音波または経食道エコーガイドの心房生検を開発し、心房細動例および非心房細動例での構造的リモデリングの組織病理学的背景を評価した。その結果、線維化に先行する細胞間隙増大(intercellular space)、間質線維化(fibrosis)、心筋実質における心筋粗鬆化(myofbrillar loss)、細胞数の代用である心筋核密度の減少(nuclear density)、そして特に高齢者におけるアミロイド沈着がvoltage低下によって表現される構造的リモデリングの進行と関連した。成人先天性心疾患例においてもこのような構造的リモデリングの進行が予想される。現時点で治療法が確立していない心房構造的リモデリングの治療介入は今後の大きな課題であり、組織病理学的評価のさらなる解析だけでなく、ゲノム、エピゲノム、マルチオミックス解析などの統合解析によるメカニズムの解明が必要である。