第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション3(I-PD3)
小児心臓外科手術の周術期合併症

2024年7月11日(木) 09:40 〜 11:10 第3会場 (4F 409+410)

座長:岩崎 達雄(岡山大学病院 小児麻酔科)
座長:和田 直樹(榊原記念病院 心臓血管外科)

[I-PD3-1] 術後心肺停止を防ぐ多職種での取り組み

制野 勇介 (国立循環器病研究センター 集中治療科)

キーワード:心肺停止, 術後合併症, 多職種

小児心臓外科手術の周術期合併症は患者の予後に大きな影響を与えるため、その予防やより良い治療管理に取り組むことは重要である。その中でも特に心肺停止は重大な合併症であり、心臓手術を受ける小児は心肺停止のリスクが高く、術後5%程度発生すると報告されている。また心肺停止は一度起こると死亡率が上昇し、神経学的障害が問題となるため、早期予測と予防、迅速な対応、そして蘇生後の管理が極めて重要である。
様々な職種が入り乱れるICUで、術後心肺停止の発生を減少させ、予後を改善させるためには、多職種の医療従事者によるチーム力を高めることが必要である。また医療安全の視点での取り組みが重要になる場合もある。
新生児症例や難易度の高い術式、術前状態、高乳酸血症など様々な既知の心肺停止危険因子の有無から患者をスクリーニングし、ハイリスク症例を事前に把握することで心肺停止イベントを減らすとの報告があるが、医師だけでなく、看護師や臨床工学技士などの多職種の医療チームで情報共有を行い患者のモニタリングを強化することが心肺停止の予防に繋がる。
また心肺停止が発生した際は、迅速な心肺蘇生が必要となるが、術後の血行動態が並列循環やフォンタン循環の児や、重篤な弁逆流のある児では、効果的な心肺蘇生が行えず自己心拍再開が困難でECMOを用いたECPRの実施が必要になる場合が多い。緊急時のコミュニケーションを円滑に行うために、明確な役割分担と情報共有を行い、蘇生プロトコールの作成や平時からのシミュレーションなどの準備が重要となる。
当センターでは、2023年4月より集中治療医が小児心臓外科患者のICU管理に加わり新たな体制となった。過去の心肺停止蘇生事象を振り返るとともに、当センターでの術後心肺停止への多職種での取り組みを紹介する。