[I-PD4-2] SAPIEN3の留置経験と適応拡大に向けて
Keywords:TPVI, 生体弁, 心外導管
エドワーズ社のSAPIEN3は,2016年に大動脈弁位での使用が国内で承認され,経皮的大動脈弁置換術(TAVI)で広く使用されている.さらに,革新的医療機器条件付き早期承認制度により,2020年には肺動脈弁位での使用も追加承認され,2022年2月に国内での1例目が施行された.これは,現在広く使用されているHarmony TPVより承認,実施とも約1年早い.しかし実際の経皮的肺動脈弁置換術(TPVI)の実施症例数は,Harmony TPVが1年で150例程度に対して,SAPIEN3は2年で2例と限定的である. SAPIEN3は,20mm,23mm,26mm,29mmの4つのサイズラインナップからなり,拡張時の高さ(全長)は15.5mmから22.5mmと51mmもしくは55mmあるHarmony TPVに比して半分から1/3程度の長さとなる.国内での適応は,外科的生体弁もしくは右室流出路心外導管の機能不全で,肺動脈狭窄および閉鎖不全が対象となる.生体弁や心外導管による右室流出路形成患者群は,一般的にHarmony TPVが対象とする自己弁輪や1弁付きパッチによる右室流出路形成患者群に比して,小児期からの導管交換などにより再手術回数が多い傾向にある.このため,再開胸を含む外科手術リスクの低減という点において,SAPIEN3はHarmony TPVと同等以上の効果が期待される.当院では,2023年5月に,ファロー四徴症術後の生体弁機能不全による肺動脈弁狭窄例に対してSapien3留置術を経験した.本症例は,国内2例目の実施例で,TAVIと同様に開胸を伴わない低侵襲治療の効果を実感する症例であった.治療の適用や実際の治療手技に加えて本治療の拡大のために必要な事項についても述べる.