[I-PD5-1] 抗SS-A抗体陽性母体における胎児のCCAVBの発症機序と高サイトカイン血症
キーワード:CCAVB, 抗SSA抗体, サイトカイン
抗SS-A抗体は52-kDaと60-kDaの2つのサブユニットからなるタンパク質とリポ核酸との複合体であるRo抗原に対する自己抗体で、先天性完全房室ブロック(CCAVB)の発症に強く関与している。このCCAVBの臨床的重要性は心内膜線維化(EFE)、拡張型心筋症(DCM)への進展で、そこにも免疫学的機序が働いていると推測されている。CCAVB発生の機序としては、抗SS-A抗体のカルシウムチャンネルへの交差的結合により心臓のカルシウム代謝に病的変化が生じ、その結果胎児心筋のアポトーシスが亢進し、通常心筋細胞表面には存在しないRo52,Ro60が細胞表面に誘導され、これらに抗SS-A抗体が結合し、貪食細胞の活性化,白血球や補体の結合、サイトカイン産生などから心筋の炎症が進み、結果的に不可逆的なAVBへ進行するとされる。このCCAVB発生の発端的機序については最近の研究に大きな進展はない様である。一方で、CCAVBに至る炎症やEFEやDCMへの進展について、近年IFN-αやNK細胞の関与を示唆する報告が比較的多く見られている。また背景としてTNFα、TGFβの遺伝子多型が関係するという報告も見られているが、いずれにしろ未だに解明されていない部分が多い。一方、我々は抗SS-A抗体陽性母体から出生し血球貪食性リンパ組織球症ないし新生児ループスを発症した同胞例を報告した。その後、全身性自己免疫疾患母体児14例の臍帯血サイトカインプロファイルの検討を行った。その結果、母体の自己免疫疾患の種類を超えて、新生児10例で高サイトカイン血症を認め、その内5例は10種類以上のサイトカインが非常に高値でサイトカインストームといえる状態だった。全身性自己免疫疾患母体児では何らかの機序で免疫応答が亢進する場合があると考えられる。どのような免疫応答が起きているのか検討を続けており、その知見も報告する。