[I-PD5-3] 抗SSA抗体関連先天性完全房室ブロックの胎児期から出生後の管理
Keywords:抗SSA抗体, 先天性完全房室ブロック, 予後
【背景】抗SSA抗体陽性の先天性完全房室ブロック(CCAVB;Congenital complete atrioventricular block)の標準的な胎内治療はない。【目的】胎児心エコー/心磁図で診断された抗SSA抗体関連CCAVBにおいて当院の胎児/出生後管理と予後を検討する。【方法】2010~2023年に筑波大学附属病院に紹介された抗SSA抗体陽性妊娠129例(104母体)のうちCCAVB 6例(4.7%)を対象とし後方視的に検討した。フッ化ステロイドは胎児死亡・心筋症抑制の目的で親が同意した場合、β刺激薬は胎児心拍数≦55bpm(それ以上でも心機能異常)の場合に投与。【結果】母年齢は27~35歳(中央値32)で無症候(4例)、SLE(1例)、シェーグレン症候群(1例)。診断は18~29週(中央値23)。心房拍数143±10bpm、心室拍数59±6bpm。心磁図(4例)のQRS 48.5±2.7msec, QTc(B) 430±64msec (QT延長2例)。CTAR 39.5±5.8%で、高エコー輝度(3例)、心膜液貯留(4例)、中等度の僧帽弁閉鎖不全(3例)、右室収縮能低下(1例)、心室期外収縮(3例)、非持続性心室頻拍疑い(1例)あり。TOP1例を除く5例のうち2例でフッ化ステロイド、4例でβ刺激薬投与。無治療は1例。全例帝王切開で、36週4日~38週2日(中央値37)、出生体重 2571±222g。5例中4例(日齢1~2か月)にPM植込み術(VVI)が施行され、1例で2歳時にASD閉鎖術時にDDDへ変更。VVIの心外膜リード位置は左心室心尖部(4例)、右室前壁(1例)。ペーシング前後でCTR は平均63.5%から54.3%に改善。追跡期間(5例)は3~84か月(中央値60)で全例生存し拡張型心筋症の発症なし。【考察】積極的な胎内治療は心筋障害の抑制効果のみならず、CCAVBが回復した報告も散見される。心室ペーシング位置は左室心尖部(心外膜)や右室中隔(経静脈)が左室同期性に有利である。【結論】今回、胎児死亡や拡張型心筋症の発症はなかったが、胎内治療のプロトコール、長期予後などは更なる検討が必要である。