[I-PD6-2] 小児Ross手術の遠隔期成績の検討
Keywords:Ross, aortic valve disease, surgical result
[背景と目的] 当施設におけるRoss手術の遠隔期成績を検討し、現在の“Ross手術の位置付け”について考察した。[対象と方法] 1998年以降Ross手術を施行した72例を対象とした。当施設における術式の工夫として、Autograftは拡張予防のため自己心膜ストリップを挟み、確実な縫着と変形を防ぐために基本的に全周interrupt縫合を採用している。Ross手術時の年齢、体重は8.8 (中央値, 0.1-23)歳、24.2 (3.6-64)kgであった。これら72例の手術成績、術後大動脈弁機能、左心機能について解析を行った。平均観察期間は11.0±7.8年だった。[結果1] 手術死亡を2例(いずれもBAV後急性ARに対する乳児早期Ross症例)、遠隔期死亡を1例(心不全死)認めた。累積生存率は10年97.1% 20年97.1%であった。外科的再介入は17例(大動脈弁/基部8例, 右室流出路再建 13例, その他2例, 重複あり)で、再介入回避率は5年91.3% 10年83.4% 20年58.4%であった。大動脈弁/基部に限定した再介入回避率は5年96.5% 10年93.9% 20年78.9%(同時期に施行したAVP 5年74.5%, AVR 10年85.7%, Ozaki 5年83.3%, p<0.01)、右室流出路再建に限定した再介入回避率は5年94.5% 10年86.4% 20年69.8%であった。Ross手術はAVRと同等以上の良好な手術成績であり、AVPとOzaki手術は長期的なdurabilityに懸念があることが示唆された。[結果2] Ross手術症例における最終f/u時の心エコー検査(interval:平均6.5年)では、大動脈弁圧較差4.4±2.2mmHg(流速1.03±0.24m/s)、AR grade 0.7±0.8度で、AVP/Ozaki症例と比較し有意に良好な大動脈弁機能であった。LV mass index(71.0±26.2)およびLVEF(68.2±8.9)は他大動脈手術との有意差を認めなかった。 [結語]Ross手術は将来的なRVOT再介入の問題を内包する複雑な術式であるが、Autograftの遠隔期機能は良好に保たれ有用な術式であると考えられる。