[I-PD7-2] 成人期Ebstein病の治療戦略
Keywords:成人先天性心疾患, エブスタイン病, Cone手術
(はじめに)Ebstein病は三尖弁異常単独疾患ではなく、右室疾患の一部分症と理解することが重要で、このことが治療戦略を立てる上でも不可欠となる。この疾患の本態は右室及び三尖弁形成不全で、三尖弁閉鎖不全と機能不全のある拡大した不全右室が認められる。以前より、多くの三尖弁形成術が行われてきたが、Cone手術により三尖弁形成術の適応が拡大されてきた。現在では、ガイドライン上もこの疾患でのCone手術は第一選択である。(対象、方法)Ebstein病に対し、1992年から2023年4月までに三尖弁形成術を行った78 症例を対象とした。2010年からCone手術を採用したが、採用前(BC群)の36症例と採用後(AC群)の42症例を比較検討した。手術方法は三尖弁形成ではmonocuspに作り変えること、さらには右室形成とともに、三尖弁を正常弁輪位置に再固定することを基本としている。従来の手術に比べ、各弁尖の形成不全の症例にも適応拡大された。(結果)手術死亡はなく、BC群は置換術が3例でグレン手術を併用した症例が7例であったのに対し、AC群は置換症例がなく、グレン手術を併用した症例は1例のみであった。再介入回避率は1年後のBC群は94.4%に対し、AC群は96.3%であった。しかしながら5年後はそれぞれ91.6%、91.2%と差は認められなかった。再手術はBC群6例、AC群2例認めたが、それぞれの群にグレン併用およびフォンタン循環に転換した症例をそれぞれ2例ずつ認めた。さらにAC群の遠隔期1例に人工弁置換術を行った症例を認めた。この1例はCone術直後の弁逆流は制御されていたが、右心不全の進行によりtetheringの所見が認められ、弁逆流が制御できず、グレン手術を併用した50歳代の症例であった。【結語】Cone手術により三尖弁形成術の適応が拡大され成績も向上したが、右室機能の観点から、症状の発現前の状態を判断し、早期の手術介入が望まれる。