[I-PSY1-3] 総肺静脈還流異常症を合併する単心室症例に対する外科治療戦略
キーワード:総肺静脈還流異常症, 無脾症候群, 外科遠隔治療成績
【背景・目的】リスクの高い総肺静脈還流異常症(TAPVC)を伴う単心室症に対する妥当な外科治療戦略を過去成績から考察する。【方法】当院開設以来TAPVCを伴う単心室治療群142例を対象とした。男子80女子62、出生時平均2.78kg。診断はAsplenia131、single RV6、HLHS3ほか。TAPVCのsubtypeはI型48/II型56/III型15/IV型19/不明4。TAPVCへの治療介入は、2000年以降は原則PVOがある時点。【結果】平均経過観察期間は9.1年(最大39.4年)。初回介入はshunt78/PAB28/BDG13/VPC11/bPAB5他を中央値day34、3.3kgで施行し、早期死亡9。総死亡数は65(45.8%)で回避率は1年68.7%、5年58.1%、10年57.3%、20年49.0%であったが、2000年で分ける(前期48後期94)と後期は改善(p<0.01、Log-rank)していた。TAPVCへの介入は81例(57.0%)で初回介入時は53、以後グレン前2、グレン時23、フォンタン時3。待機7例を除くフォンタン到達率は51.1%(69例)。TAPVCへの再外科治療介入は27例36回。Outcomeを総死亡として解析(比例ハザード)すると単変量では、初回手術時のTAPVC介入(p=0.47)・房室弁介入(p=0.01)・人工心肺使用(p=0.01)・心停止(p=0.03)が有意な因子であったが、多変量では有意な因子なし。TAPVC subtype、TAPVC再介入などもリスク因子ではなかった。前後期では、初回介入日は後期で早くなる(前期day269後期day61、p=0.01)一方で、単変量危険因子である初回TAPVC介入(前期15後期38、p=0.28)、房室弁介入(前期1後期20、p<0.01)、人工心肺(前期22後期80、p<0.01)、心停止(前期9後期54、p<0.01))は後期で増えていた。【考察】時代背景があるとは言え、危険因子を多く用いても後期に死亡回避率が改善していることから、初回から積極的に介入する現在の方針は妥当ではないか。【結論】TAPVCを合併した単心室症例の治療成績は良好とは言えなかった。ただ、現在の積極的な外科介入方針は治療成績の改善が期待できるのではないか。