[I-SY1-3] 完全大血管転位症に対するArterial switch operationの工夫:Open techniqueとmedially hinged trap-door法
キーワード:動脈スイッチ手術, 大血管転位症, 先天性心疾患
【背景】完全大血管転位症(Transposition of the Great Arteries: TGA)に対するArterial switch手術は、短期的には冠動脈狭窄が、中長期的には肺動脈狭窄や大動脈弁逆流が問題となる。当院のArterial switch手術の成績を検討した。【方法】当院のArterial switchはopen techniqueにより冠動脈と大動脈弁との位置関係を十分に目視すること、そしてmedially hinged trap-door 法を用いた冠動脈移植により冠動脈狭窄を防ぐ工夫をしている。また冠動脈移植の際には大動脈弁交連部より上方を切開し、冠動脈ボタンの頭側は縫縮することで、バルサルバ洞と上行大動脈の拡大を防ぐよう努めている。当院で1993年1月から2022年12月にarterial switch手術を施行したTGA I型104例を解析し、患者背景、生存率、心血管再介入累積発生率を検討した。【結果】Arterial switchは生後12[9-14]日、体重3.0[2.8-3.4]kgで実施した。冠動脈はSheher 1型79例(76.0%)、2型12例(11.5%)であり、大血管は全例で大動脈が肺動脈の右前に位置していた。Arterial switch手術は全例で冠動脈移植をmedially hinged trap-door法で行い、肺動脈はLecompte法で前方へ移動させた。術後5年、10年、20年生存率は100%、98.4%、98.4%だった。死亡は1例であり術後SVC閉塞から水頭症を来し脳障害により術後7年目に失った。術後5年、10年、20年の再介入累積発生率は22.4%、25.3%、25.3%で、肺動脈狭窄解除21例(カテーテル的22例、外科的3例)、大動脈弁置換術1例、カテーテル的SVC閉塞解除2例で、冠動脈への再介入はなかった。生存例は全例がNYHA I度相当で心不全はなく、大動脈弁置換時術を行った1例以外は中等度以上の大動脈弁逆流を来すことなく経過している。【結語】当院で実施したTGA I型に対するArterial switch手術では、冠動脈狭窄は認めず、大動脈弁逆流への再介入も1例だった。Arterial switch手術における工夫について手術動画を供覧する。